「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」(国立新美術館 3月19日〜6月30日/兵庫県立美術館 9月20日〜2026年1月4日)

モダン。モダニティ。この言葉を思い浮かべると胸がちくりとするのはいつ頃からだろうか。この言葉が想起させる理想やすべての人によってよきことと謳う「大きな物語」が、まさに夢であり、また多くの人々にとっては必ずしもよい結果にならなかったことを知ってしまった頃だろうか。そういえば近年、「大きな物語」をテーマとする展覧会を見ることが減った気がする。そんな気持ちを抱えて訪れた「リビング・モダニティ」は、とても多くの小さな発見をもたらしてくれた。それはおそらく、そこに名を連ねる著名な建築家たちによる実験や理想の具現化が、大規模な公共建築ではなく住宅によって紹介されたからかもしれない。空間の統治者ではなく、ひとりの住人としての目線の高さで挑んだ新しい家の窓からは、現代と地続きの理想を望むことができた。
「横浜美術館リニューアルオープン記念展 佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」(横浜美術館 6月28日〜11月3日)

横浜美術館がリニューアルオープン記念展に佐藤雅彦。正直、最初とても驚いた。私見ではあるが、佐藤は広くそして深く本質的な意味での「デザイン」を展開する人だと思っている。美術館の大切な記念展でデザインがテーマなのはなぜかと思ったわけだ。これは先入観が過ぎた浅薄な見方だった。横浜美術館の眼は、表現者と教育者を行き来、または融合する佐藤雅彦と自らの足元に向けられていた。長年、教育普及に大きな力を注いできた同館は再開館にあたって、丹下健三による象徴的な大空間を子供から大人まで、様々な来館者の居場所になるよう細やかな工夫を凝らしている。知ることとそれを伝えることの楽しさをよく知る佐藤雅彦。その「作り方を作る」活動を回顧する展覧会は、これからの美術館の在り方を描こうとする横浜美術館による最初の答えなのだろう。
「カルン・タカール・コレクション インド更紗 世界をめぐる物語」(東京ステーションギャラリー 9月13日〜11月9日)

欧州デザイン史の根元にはインド更紗がある。大航海時代にインドから欧州にもたらされた更紗はその色彩と手触りで人々を魅了し大流行。結果、英国は貿易赤字に苦しみ、それが自国での綿織物生産につながる。水力紡績機や蒸気機関動力の力織機が開発され、綿織物の大量生産が可能となった。産業革命である。インド更紗はそれほどに力強く社会を変えたものであった。カルン・タカール・コレクションによる展覧会は、そのインド更紗が持つ引力を存分に体感できる機会となった。とくに大型作品の展示では、一枚の布が空間を支配する様に圧倒された。劣化の進行と背中合わせの歴史的テキスタイルの収集・保存は、そうそう簡単に取り組めるものではない。「私はこのコレクションの束の間の守り人にすぎません」とのカルン・カタールの言葉は、その決意と更紗への敬意がこめられていると心が揺さぶられた。
























