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アートと気候危機のいま vol.9 地球のいまを映す「泥」の物語──リッケ・ルター、気候危機を“翻訳”する【6/7ページ】

一次情報に直接触れるほうがずっとわかりやすい

──あなたはN55の頃からすでに取り組んでいたとは思うのですが、アーティストとして「より環境に負荷をかけない、搾取的でない制作方法」に変えてきた部分はありますか? 例えば10年前と比べて、なにか変えた点などがあれば教えてください。

ルター ええ。たしかに変化はあったと思います。90年代にあるキュレーターから「あなたたちはエコロジーに取り組んでいるの?」と聞かれたとき、私は「それってどういう意味?」と答えていたぐらいなので。エコロジーを意識してやっていたわけではなく、行動が先だったんですね。昔はグローバリゼーションの真っ只中で、私は世界中を飛び回っていて、飛行機に乗ることの問題すらあまり気にしていませんでした。

──その時代の空気もありますよね。90年代のアート界は、ある意味とても自由で開かれていた。 

ルター ええ。でもいまは、物語のつくり方そのものが変わってきていると思います。例えば私たちの「Learning Site」では、リサイクルを前提としたプロジェクトを始めました。作品は「アーカイブに保存されるべきもの」ではなく、「堆肥にできるもの」と捉え直しています。

──シンガポールでのキノコのプロジェクトも、循環型の思考が中心にありましたよね。すべてがオープンソースで、マニュアルのように自由に使えるようになっていた。作品をどうつくり、どう展示し、どう公開するかということについて、そうした考え方がほかのアーティストにも広まるといいですよね。

ルター そう願っています。もちろん、すべてのアーティストがそうなるとは限らないですけどね。でも、たしかに意識は高まっていると思います。みんなそれぞれ違ったかたちで取り組んでいる。なかには、私よりも徹底してやっている人もいますよ。

──最後に、あなたが日々アクセスしているメディアや情報源について教えてください。最新の気候科学などについて、どのように情報収集をしていますか? 研究者の友人から直接聞いているのか、それとも特定のサイトやニュースソースを見ているのか。

ルター 新聞も読みますが、何より一番いいのは「大学に行って講義を聴くこと」ですね。

──それは一次情報そのものですね。

ルター そうなんです。例えば私がAMOCの状態を理解しようとしたとき、新聞の気候欄を読んでもあまりピンときませんでした。なにかが違う感じがしていた。でも、実際に数理統計学者の講義を聴いたら「ああ、これだ!」と思えたんです。講義中に彼女が語った言葉をそのままスクリプトに書き写すだけで、完璧な内容になったくらい。とても直接的で、理解しやすかった。あいだに何人も「媒介者」が入るより、一次情報に直接触れるほうがずっとわかりやすいんですよね。それが研究機関に所属している特権だと思います。完全には理解できないことも多いけど、それでもなにかを受け取り、作品につなげることができる。

──ありがとう。本当に素晴らしいお話でした。

ルター こちらこそ、素晴らしい時間でした。ありがとうございました。

リッケ・ルター

編集部