宇宙開発の歴史と現代アートが交差する空間
こうしたJAXAとの協働を象徴するのが、日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに用いられた内之浦宇宙空間観測所の管制卓と、《Halo》《宇宙百景》が同じ空間に展開される展示だ。宇宙開発の歴史を物語る装置と、現代の観測データ、そしてYOSHIROTTENの想像力から生まれた作品が、ひとつの大きなインスタレーションのような空間をつくり上げている。

管制卓は、1970年に日本初の人工衛星「おおすみ」を軌道へと導いたもので、YOSHIROTTENの故郷でもある鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で実際に使用されていた。会場では、そのボタンやランプの点滅が、ISSに搭載されたMAXIの観測データに反応する仕組みとなっている。かつて人工衛星との交信を担った歴史的な装置が、現代の宇宙観測データと接続される。そこには、日本の宇宙開発の過去と現在を結びつけるという意味も見出せる。
あわせて展示されるのが、JAXAが2010年に打ち上げた小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」のバックアップモデルだ。太陽光の圧力を推進力として宇宙空間を航行する「IKAROS」は、2015年に通信が途絶えた現在も、宇宙のどこかを飛行していると考えられている。

そして、同じ空間で存在感を放つのが、全長約6メートルにおよぶネオン管の彫刻作品《Halo》だ。本作は、天の川銀河の中心に位置する巨大ブラックホール「いて座A*」の周囲を公転する恒星の軌道を、ネオン管によって表現したもの。観測されている数十個の軌道のなかから6つを選び、楕円を描く光の線として空間に浮かび上がらせている。もっとも大きな軌道の平均直径は約1兆3300億キロメートルに及ぶというその途方もないスケールが、人間の身体と比較できる彫刻へと置き換えられている。《Halo》は、観測によって明らかになった宇宙の巨大な現象を、光の軌跡として視覚化する作品だ。

さらに、この空間の奥に広がる壁面には、映像作品《宇宙百景》が投影される。本作は、衛星写真や観測データ、シミュレーションCGなどを手がかりに、YOSHIROTTENが想像力を通じて描き出した100のイメージからなる作品だ。観測と想像のあいだに広がる宇宙の様々な姿が、ギャラリーBの壁面全体に、約100分かけて映し出される。
歴史的な管制卓、星々の運動を可視化したネオン管、そして宇宙の風景を描く映像。実際の科学技術と観測データ、アーティストの想像力が交差するこの空間は、本展のテーマである「彼方との交信」をもっとも象徴する場所のひとつといえるだろう。



















