MES個展「レイ/RE-I」(PARCO MUSEUM TOKYO)開幕レポート。「零」「霊」「レイヴ」から読み解く渋谷【2/2ページ】

二・二六事件から「レイ」へ。歴史と身体を結ぶパフォーマンス

 本展のタイトル「レイ/RE-I」は、「零」「霊」「冷」をはじめ、光線を意味する「Ray」、重なりを意味する「レイヤー」、さらに「レイヴ」「隷」「令」「黎」「麗」など、同じ音を持つ言葉に由来している。これまでもMESは、《サイ/SA-I》(2021)、《タイ/TA-I》(2022)、《ガイ/GA-I》(2023)、《ダイ/DA-I》(2024)、《カイ/KA-I》(2025)と、ひとつの音に複数の意味を重ねる作品を発表してきた。今回の《レイ/RE-I》(2026)も、そうした一連の試みの延長線上に位置づけられる。

陸軍刑務所刑場跡(二・二六事件慰霊像)。会場から徒歩5分ほどの距離にある

 その出発点となるのが、渋谷の街に残る二・二六事件の記憶だ。会場からほど近い場所には、1936年の二・二六事件に関する慰霊碑がある。かつて東京陸軍刑務所が置かれたこの場所では、事件の首謀者らが銃殺刑に処されており、そのひとりに事件の理論的支柱とされた思想家・北一輝(1883〜1937)がいた。北は妻のすず子とともに長時間の読経を続け、すず子が神がかりの状態で受け取ったとされる神託を『神仙録』(通称『霊告日記』)に書き留めていた。こうした宗教的な儀礼には、信仰や霊的な事象への関心に加え、特高警察の監視を逃れるための側面もあったとされる。

 MESは、社会に影響を及ぼした人物の思想の背後にある、こうした私的な共同儀礼にも目を向ける。作品では、白い四角形の「空」と赤く丸い「日」、そして観音像といったモチーフを通して、歴史と信仰、身体の関係を探っている。

《レイ/RE-I》のパフォーマンスより
《レイ/RE-I》のパフォーマンスより

 《レイ/RE-I》のパフォーマンスでは、背景に二・二六事件の慰霊碑をとらえた映像が映し出される。その前で、MESのふたりは身体の背中にレーザーで『神仙録』のテキストを照射し、その様子をサーモグラフィーカメラで撮影。熱によって可視化された身体の映像が、ふたりが手にした円形のスクリーンに投影される。

 背中に投射される過去の言葉、それを受け止める現在の身体、そして背景に映る渋谷の慰霊碑。歴史的な記録と身体の熱が、レーザーやサーモグラフィーを介してひとつの空間に重ね合わされていく。渋谷の歴史に残る出来事と、そこで営まれてきた個人的な儀礼を、身体を通してたどる試みとなっている。

展示室の外へと広がる、MESの活動

 今回の展覧会にあわせ、MESの活動と関わりの深いクラブカルチャーやアーティストとの交流に焦点を当てた関連イベントも開催される。

 10月26日には、渋谷PARCOの9階にあるSUPER DOMMUNEで特別プログラム「SUPER DOMMUNE × MES」を実施。DOMMUNE主宰の宇川直宏をはじめ、MESと関わりのあるゲストが登場する予定だ。

 さらに、11月4日にはアートウィーク東京にあわせ、MESがDJやVJ、パフォーマーをキュレーションするパーティー「REVOLIC -Revolution Holic/革命中毒」が渋谷PARCOの10階で開催される。

 11月8日には、Chim↑Pom from Smappa!GroupとMESによるトークイベントも予定されている。Chim↑Pomは2012年に旧渋谷PARCOのPARCO Museumで個展を開催しており、「Super Rat」シリーズでは渋谷を舞台に都市とアートの関係を問いかけてきた。ともに都市空間や様々なカルチャーとの接点を活動の場としてきた両者が、渋谷で言葉を交わす機会となる。

編集部