東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)で「元禄!師宣劇場十二ヶ月風俗図巻大公開」が開幕した。会期は8月23日まで。担当は同館学芸員の吉田恵理。なお、前期が7月26日まで、後期が7月28日からとなっており、展示替えが行われる。
本展は江戸時代初期の浮世絵師、菱川師宣(?~1694)の絹本着色「十二ヶ月風俗図巻」2巻を中心に師宣の肉筆画を紹介しつつ、同じく元禄の絵師である英一蝶(1652~1724)や、師宣を継承した宮川長春(1682~1752)といった宮川派の系譜をたどるもの。また、江戸後期に師宣の画風を「リバイバル」させた絵師たちの作品も展示する、序幕、第1幕、第2幕、大詰の4部構成になっている。

大衆文化の隆盛とともに
師宣は房国保田村(千葉県鋸南町)の縫箔師・菱川吉左衛門の長男として生まれる。通称は吉兵衛、薙髪して友竹と名乗った。若くして江戸へ出て、寛文年間(1661~73)興隆期に大衆出版界にデビュー。土佐派系の町絵師の流れを基調とし、漢画系の諸派をも吸収して新様式を確立した。
本展は序幕「主役は庶民! 師宣前史から元禄期の絵画」から始まる。ここでは師宣登場の前史を紹介しつつ、師宣の代表作や、師宣以外の元禄期に活躍した絵師の作品を展示している。

序幕ではまず、師宣登場前の近世初期の作品である《四条河原遊楽図屛風》(江戸時代、1624〜44頃)を展示。鴨川を中央に配置し、女歌舞伎、見世物小屋、若衆能といった当時の風俗を題材にした屛風は、貨幣の流通と経済の成長とともに庶民文化が爛熟していった時代をいまに伝える。

本作と並ぶのが、師宣晩年の代表作として知られる《見返り美人図》(江戸時代、1688〜94頃)だ。美人図と名打たれているが、その顔は半分しか見えず、むしろ着物が前景化している本作。玉結びの髪や着物の丸袖、細やかに表現された柄などからは、元禄期当時の最新流行を描こうとした師宣の姿勢が感じられる。また、序幕では英一蝶や尾形光琳の肉筆画も展示され、元禄期の絵画のモードを様々な角度から知ることが可能だ。

続く第1幕「元禄! 師宣劇場」では、本展の白眉となる《十二ヶ月風俗図巻》(江戸時代、1692〜93頃)を展示する。本作は江戸の町で暮らす人々の毎月の行事や風習を上下巻で1年分描いた長大な画巻だ。前期(6月27日〜7月26日)が「一月」から「六月」の上巻、後期(7月28日〜8月23日)が「七月」から「十二月」の下巻の展示となる。


本作は歌舞伎や遊里、行楽地の四季といったものと異なる、裕福な武家層の月次行事という師宣としては珍しい画題が特徴だ。発色の良い絵具で行事を楽しむ人物たちが生き生きと描かれており、当初のままかは定かではないが、装丁も高級だ。行事で使われる道具や身にまとった着物、女性たちの細かな仕草、そして子供たちの豊かな表情など、見所がつきない傑作だ。
































