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「ロン・ミュエク」展(森美術館)開幕レポート。圧倒的なリアリティの先に広がる解釈や思索の余白【3/3ページ】

空間を支配する《マス》

 本展の目玉となるのは、巨大な頭蓋骨の彫刻100点で構成されるインスタレーション《マス》(2016〜17)だ。本作はメルボルンで開催されたNGVトリエンナーレ 2017で初公開され、その後フランス、イタリア、オランダ、そして韓国で展示された。展示室の構造や特性に合わせて再構成されるサイトスペシフィックな作品である。同館では約300平米の空間で展開されており、その光景は圧巻だ。世界各地で死を伴う暴力の連鎖が日常的に起きているいま、頭蓋骨たちが「メメント・モリ(死を忘れるな)」というメッセージを発する。照明の明暗で少しずつ異なる表情を見せる頭蓋骨たちのあいだを縫うように、鑑賞者は歩くことになる。

ロン・ミュエク《マス》(2016〜17)合成ポリマー塗料、ファイバーグラス サイズ可変 ビクトリア国立博物館
ゴーティエ・ドゥブロンド《ロン・ミュエクのスタジオ、ベントナー、2019-2023》(2019〜23)Cプリント、アルミ複合板

 会場では、フランスの写真家・映画監督のゴーティエ・ドゥブロンドが、25年以上にわたり記録してきたミュエクのスタジオと制作風景も公開されている。ロンドンやワイト島のスタジオでの創作プロセスを収めた写真や映像は、ミュエクの創造の原点を紐解く貴重な資料だ。完成した彫刻作品とあわせて鑑賞することで、その制作手法についてのより深い理解が得られるだろう。

 初期から現在に至るまで、ロン・ミュエクの多種多様な作品群が展示されている本展。鑑賞者の想像力や解釈を限定することなく、いまこの場所でしか鑑賞できないサイトスペシフィックな体験がここにはある。

編集部