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「恵比寿映像祭2026」(東京都写真美術館)開幕レポート。多声的な表現が交差する映像祭の現在【3/3ページ】

 3階展示室では、第2回コミッション・プロジェクト特別賞を受賞した小森はるかの新作と、総合テーマと連動する東京都コレクションが紹介される。

 小森は、災禍の後を生きる人々や、記憶を受け継ぐ人々と出会い、その日常を長期的に記録してきた。今回の新作では、新潟県阿賀野市に暮らす中村美奈子の日々、静岡県川根本町・地名で続いてきた茶畑の営み、そして岩手県陸前高田市の風景など、いずれも大きな出来事の影で静かに失われつつあるものや、かたちを変えながら受け継がれていく時間を映し出している。

第2回コミッション・プロジェクト特別賞を受賞した小森はるかの新作展示

 同フロアでは、東京都写真美術館をはじめとする都立ミュージアムが管理する東京都コレクションも展示される。「現代と歴史」を切り口に、異なる時代や媒体の作品を並置することで、小さな違和感やズレが生まれ、多様な見方が浮かび上がる構成となっている。

東京都コレクションの展示風景

 エキソニモの《Joiner – Collage Camera》(2010)は、iPhone 3GS用アプリとして制作された作品だ。今回の展示ではマイグレーションが行われ、再び動作するかたちで紹介されている。

エキソニモ《Joiner – Collage Camera》(2010)の展示風景

 今年の恵比寿映像祭も、美術館の内部にとどまらず、恵比寿の街へと広がる。恵比寿ガーデンプレイス・センター広場では、エキソニモによる《Kiss, or Dual Monitors 2026》(2026)が発表される。2つの巨大なLEDウォールに映し出された顔は重なり合い、キスをしているかのように見える。かつて宙に吊られていたモニターは地上へと移され、情報が私たちの日常を支える存在となった現在の状況を象徴する。本作には来場者が自身の顔で参加できる仕掛けも用意されている。

オフサイト展示より、エキソニモ《Kiss, or Dual Monitors 2026》(2026)

 恵比寿駅と東京都写真美術館を結ぶスカイウォークには、FAMEMEの「ドリアンが香水になったら?」という発想から生まれたプロジェクト《Duri-grance by FAMEME》(2026)が行われている。スカイウォークにはドリアン香水の広告バナーが掲出され、、美術館1階や外壁と連動したインスタレーションが展開される。強烈な香りに対する先入観や、公共空間で何が受け入れられ、何が排除されるのかという感覚を問い返しながら、都市そのものを展示空間として捉え直している。

 また展示にとどまらず、今年の映像祭では多彩な上映プログラムも展開されている。総合テーマに沿い、劇映画から実験映画まで幅広い作品が集められた、モーガン・クウェインタンスやチョン・ソジョンによる日本初公開作品のほか、CCJによるデジタル修復を経た小杉武久とタージ・マハル旅行団の特集上映など、本邦初公開映像も多数紹介される。

 そのほか、東京都写真美術館1階ホールやスタジオを会場に、パフォーマンス、ワークショップ、アーティスト・トークを含むライブ・イベントも実施。シンポジウムでは、映像・写真・音をめぐる多文化的視点や言語の問題、コミッション・プロジェクトや映像アーカイブについて国内外の登壇者が議論を交わす。

 さらに、恵比寿近隣の文化施設と連携した地域プログラムも展開され、展示やイベントを巡るシールラリーなどを通じて、街全体を舞台としたフェスティバルの広がりを体感できる。多声的な表現が響き合う場として、恵比寿映像祭2026は、映像を起点にした思考と体験の回路を、今年も街にひらいている。

編集部