大阪・あべのハルカス美術館で、近代日本を代表する美術家・小村雪岱(1887〜1940)を回顧する展覧会「密やかな美 小村雪岱のすべて」が始まった。担当学芸員は横山志野。
本展は、美術家としての活動にとどまらず、装幀、挿絵、舞台美術、映画美術考証など多岐にわたる雪岱の仕事を網羅しつつ、雪岱の画業を「人」とのつながりから再考するものとなる。
小村雪岱は、泉鏡花をはじめとする文学者や出版関係者、演劇人との協働を通じて独自の美意識を形成した作家として知られる。戦後は長らく忘れられた存在だったが、2009年に埼玉県立近代美術館で「小村雪岱とその時代-粋でモダンで繊細で-」が開催され、注目を集める。21年には、その独特のスタイルを明治から現代にいたる作家の作品とともに探る展覧会「小村雪岱スタイル―江戸の粋から東京モダンへ」が三井記念美術館で開催されたことは記憶に新しい。その端正で抑制の効いた画面構成、静謐さのなかに感情を湛えた表現は、高い評価を受けている。

本展は、雪岱の作風がどのような人的ネットワークや時代背景のもとで育まれたのかを、600点もの作品・資料によって検証する充実の内容だ。会場はプロローグ・エピローグのほか8章で構成。日本画の代表作をはじめ、書籍装幀や挿絵原画、舞台関連資料などが余す所なく展示され、あたらめて雪岱の活動領域の広さを視覚的に示している。

































