時代が大正から昭和へと移り変わるなか、雪岱は変わらず装幀の仕事を続けていたが、4章で注目したいのは舞台装置の仕事だ。「安士の春」「桐一葉」「大菩薩峠」「一本刀土入」などの代表作が生まれるのがこの時期。会場には1/50スケールの舞台装置の原画が並ぶ。役者を引き立てるための装置図と現実の空間を行き来する体験は、その後の仕事にもつながっていく。

続く5章の要となるのは、泉鏡花を囲む「九九九会(きゅうきゅうきゅうかい)」の存在だ。会費の九円九十九銭に由来するこの会には、作家の水上瀧太郎や日本画家・鏑木清方など多様な芸術家が参加。ここでは、そのメンバーの仕事が並ぶ。

6章では、新聞や雑誌の挿絵など大衆文芸によって広がりを見せた雪岱の挿絵の世界が広がる。ここで外せないのが作家・邦枝完二の存在だ。「江戸役者」や「おせん」などでタッグを組み、名コンビとなった邦枝と雪岱。雪岱はこの時期、大胆な余白やコントラストが特徴的な「雪岱調」を確立していく。





















