小村雪岱(1887〜1940)は川越に生まれ、装幀・舞台装置・挿絵など多分野で才能を発揮した画家。荒木寛畝塾や、東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科選科で下村観山に就いて基礎を学び、卒業後は国華社、資生堂意匠部を経て、本の装幀や舞台装置の世界で活動した。
雪岱を一躍有名にしたのは、1933年に朝日新聞に連載された邦枝完二作「おせん」の挿絵。華奢な人物像、極細の線による無駄のない描写、余白を活かした画面構成、白黒二階調の明快な配色を特徴とする絵画スタイルで大衆を魅了した。
本展では、雪岱の多岐にわたる画業から、挿絵の仕事と、その中で育まれた「雪岱調」と呼ばれる独自のスタイルに注目する。彼が着想を得たであろう先行作品との比較を交え、そのスタイルの誕生に至るまでの過程を考察。さらに、その画業をたどることで雪岱の持つ繊細なセンスや確かな描写技術を明らかにしていく。