最後に、三上晴子の大型インスタレーション《欲望のコード》(2010/2011)へ。センサーと小型カメラを搭載した90個の装置が一面に設置された「蠢く壁面」、天井から吊るされたカメラとプロジェクターを搭載した6基のロボット・アームによる「多視点を持った視覚的サーチアーム」、そして昆虫の複眼のように61画面で構成される巨大な円形の「巡視する複眼スクリーン」という、3つの要素で構成されている。
カメラを搭載した装置は来場者の動きを感知して追尾し、撮影を続け、その映像は「巡視する複眼スクリーン」や床面に投影される。同スクリーンには、世界各地に設置された監視カメラ(CCTV)の公開映像も混在しており、情報学習によって生成AIが進化し、個人がデータ化され、監視社会が進行する現在を予見していた作品としてとらえることができる。


三上は、「眼は単に視るものではなく、耳は単に聴くものではない。すなわち、耳で視て、鼻で聴いて、眼で触ることが可能である」(*2)という言葉を残しており、鑑賞者が自らの知覚とインタラクションのメカニズムに向き合う体験を、作品を通して提示することを試みたのだ。
つまり、個人が世界とどのように接続しうるのか。個人の身体において膨大な情報量を伴う運動が生まれ、それがインタラクティヴに世界と結びつくことで、人間の潜在能力が引き出され、知覚領域の拡張が起こるのではないか。そんな想像を喚起するインスタレーションを、ぜひ会場で体験してほしい。

*2──『SEIKO MIKAMI:三上晴子 記録と記憶』馬定延/渡邉朋也 編著、NTT出版、2019。



















