無響室でも、ICCコレクションの1作品《存在、皮膜、分断された身体》(1997)を予約制で体験することができる。音の反響がない特殊な空間に身を置いた鑑賞者自身が、聴診器型のツールで自身の心拍や肺の音をスキャンすると、それがパラメータとなって3Dポリゴンを継続的に変化する映像となる。同時に、スピーカーから流れる体内音がリアルタイムで増幅されることで、自身の内と外から聞こえる音のずれが生じ、意識や感覚と身体との分離を引き起こすことが狙いとされている。
ICCが1997年4月に開館する際、常設展示として10作品が委嘱制作されたが、そのうちの1点である本作は、展示室のひとつとして設けられた無響室で展示された。三上はこの作品を、身体器官の音を空間内に拡張・変容させていく「知覚による建築」を提示するものだと表現している。

2000年を最後に展示の機会がなかったため、再展示に向けて調査と修復が進められたものの、来場者がインタラクティヴに体験できる完全な状態まで復元することは叶わず、アーティスト自身の心音で体験する「サウンド・インスタレーション版」の再現展示となった。自分自身の体内音を用いたインタラクティヴ作品を体験できなかったのは残念だが、三上晴子の体内音と、それを光に変換した映像による体感型作品を通じて、そこにはいない作家の存在を感じながら無響室に身を置く体験は、異世界と接続するかのような不思議で印象深いものだった。




















