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黒川良一のオーディオ・ヴィジュアル論、2000年代メディア・アートの展開から現在へ。黒川良一×畠中実 対談

電子音楽とデジタルアートの祭典「MUTEK.JP」が昨年11月に東京都内で開催。その関連イベントとして実施された「ETERNAL Art Space」では、ベルリン在住のオーディオ・ヴィジュアルアーティスト 黒川良一による2作品《ground》《re-assembli》が上映され、大きな反響を呼んだ。黒川の経歴やオーディオ・ヴィジュアルに対する考え方、そして2000年代以降から現在に至るまで、日本のメディア・アートにおいてサウンドという要素がどのように展開したのか。同イベントをきっかけに、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員 畠中実との対談をお届けする。

構成=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

左から、黒川良一、畠中実

時を超えて「いま」とリンクする作品

畠中実(以下、畠中) MUTEK.JPの関連イベント「ETERNAL Art Space」(2024年11月22日〜24日)で《ground》(2011)、《re-assembli》(2022)の2作品を改めて拝見したのですが、あまりにも「いま」とリンクしていると感じました。とくに戦争・紛争地域で撮影された素材を用いた《ground》は10年以上前に制作されていますが、現在の世界情勢と重なって見えてくるというのはキュレーションの妙でもありますよね。もちろん、こういった世界情勢においてこそ、今回《ground》が上映されることが決定されたのだと思いますが、そもそもどのような意図で制作された作品なのかをご説明いただけますか?

黒川良一(以下、黒川) 《ground》が制作された2010〜11年当時は、(現在と異なり)世界各地の紛争が頻繁にニュースで取り上げられるといった状況ではなかったと記憶しています。いっぽうで、僕の知り合いにダニエル・ドゥムスティエという報道カメラマンがいるのですが、彼は10数年報道機関で働きながら、個人的に取材先で収集した音や映像を自身で再構成するような取り組みを行っていました。そんな彼が「自由に使って」とその素材を僕に渡してくれたので、自分もあえてそこにメッセージ性を与えるのを避け、自由にモーフィングさせて《ground》をつくりました。そしてその直後にアラブ諸国で民主化運動(アラブの春)が拡がった。そのときも「この作品は予言じゃないか」なんて言われましたね。

畠中 メッセージ性は含まれていないと言いつつも、《ground》は黒川さんの作品のなかでもほかの作品とは少し違って見えるので、何か特別な理由があるのではないかと思ったんです。

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