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「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(東京国立近代美術館)開幕レポート。歴史から姿を消した戦後女性作家たちの表現に迫る【4/5ページ】

 サインを右に進むと、具体美術協会のメンバーであった田中敦子の作品が紹介される。田中は電球とコードによる《電気服》などでも知られるが、「具体美術協会の一員である」という紹介でとどまることもあったという。田中だけでなく、同じく具体美術協会に所属した山崎つる子や実験工房に属した福島秀子も同様に、属した団体こそ知られているが、作家個人へ光が当てられることは少なかったとも考えられる。

展示風景より、田中敦子の作品 ©Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

 本展を紐解く切り口は複数挙げられるが、そのなかでも「素材」に注目することを勧めたい。多田美波はプロダクトデザインの仕事も請け負いながら、アルミニウムを用いた立体作品なども手がけていた。平面作品ではテグスを用いたものもあり、様々な素材を作品に取り込もうとしていた痕跡が浮かびあがる。

展示風景より、多田美波の作品

 同じく実験を重ねていたという点では、福島秀子の作品も興味深い。円形のスタンプが何度も押された痕跡を見つけることができるが、そのほかにも同じ作品のなかで様々な実験を繰り返しており、制作方法にも工夫がなされていることがわかる。また日本人女性として初めてヴェネチア・ビエンナーレ(第31回・1962)に参加したことでも知られる江見絹子も、斬新な制作方法を用いたひとりだ。自らの旧作を池に浸して絵具を剥がし、それをふるいにかけて新しい絵具と混ぜ合わせて用いるという手法を実践した。江見の果敢に挑戦を続ける姿勢がうかがえる。

展示風景より、福島秀子の作品
展示風景より、江見絹子の作品

編集部