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「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」(東京国立近代美術館)開幕レポート。歴史から姿を消した戦後女性作家たちの表現に迫る【3/5ページ】

 本展は、11月30日まで豊田市美術館で開催された展覧会同様章立てはされておらず、来場者に同時代を生きた14名の作家同士の応答や連関を想像させる余白を持たせた空間づくりがなされている。また成相曰く、作家ごとに作品をまとめてはいるものの、どのような角度から見ても視界に2、3名の作家の作品が入るような構成となっている。同じときを生きた彼女たちが、それぞれの表現を追求しながらも、当時の空気にどう反応していたのかを探るきっかけとなる。

 今回展覧会のポスターにも起用された山崎つる子は、具体美術協会の会員として72年の解散まで在籍したメンバーであるが、その鮮やかな色彩が用いられた絵画作品に加え、ピンクや紫色の照明で照らされたブリキや木を用いた立体作品も紹介される。その手前には、金属やガラスを素材にした作品を多く手がけた宮脇愛子の立体作品が置かれ、互いに干渉しあうように見えるものの、不思議と違和感のない空間となっている。

展示風景より
展示風景より、山崎つる子の作品 ©Estate of Tsuruko Yamazaki, courtesy of LADS Gallery, Osaka and Take Ninagawa, Tokyo

 さらに奥に進むと、本展ならではの興味深いサインが現れる。「左右どちらの順路からでもご覧いただけます。」と書かれた指示の前で、来場者は各々左右に分かれて鑑賞を続ける。前述した通り章立てされていない本展は、決められた順路もなく、来場者は自身の意思で回遊しながら鑑賞することになる。しかし会場のつくりによっては意図せず鑑賞順序が決められてしまう場合もあり、豊田市美術館では大きな会場をほとんど仕切ることなく使用することでその難を乗り越えたが、同館ではあえて順路を選ばせる行為を挟むことで、より鑑賞体験(とくに順序)の自由度の高さを強調できたように感じられる。

展示風景より、奥に順路を来場者に選ばせるサインが置かれている

 左に進むと、赤穴桂子、芥川(間所)紗織の作品が展覧されている。本展のテーマである「アンチ・アクション」は、とりわけ1958年〜60年の短い期間をコアに組み立てられているため、紹介される作品も50〜60年代に制作されたものが中心となるが、本展ではひとりの作家が短期間のなかで大きく変えた作風の違いを比較することもできる。キャプションに書かれた制作年を参照しながら、挑戦をやめない彼女たちの探究心にも触れることができるだろう。

展示風景より、芥川(間所)紗織の作品

編集部