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「再考《少女と白鳥》 贋作を持つ美術館で贋作について考える」(高知県立美術館)開幕レポート。科学調査による真贋判定の軌跡から見つかる新しい作品への向き合い方【4/5ページ】

 第4章「絵画の内側を視る」は、本展のために同館と田口かおり調査チームが協力して行った、同館の西洋美術コレクションの科学調査結果にもとづく内容となる。本章では、《少女と白鳥》が制作されたとされていた20世紀初頭の作品、同館所蔵のマルク・シャガール、マックス・ペヒシュタイン、ヴァシリー・カンディンスキーパウル・クレーの作品が登場する。同じ会場内に、実際その年代に制作された作品と、その時代には制作「されていなかった」作品が並ぶという、大変興味深い構成となっている。

 さらにそれらの科学調査内容も開示することで、本来その時代に使われていた顔料についても明らかにされており、科学的な視点からも比較できるようになっている。なお本章で調査した作品には、サンプルを採取する調査方法は採用していない。

第4章「絵画の内側を視る」の展示風景より

 本展の最後には、美術・法律・科学といった複数の分野の専⾨家に投げかけた、今回の贋作事件にまつわる質問に対する回答も掲示されている。なかには、当時本作の購入を担当した学芸員や、ベルトラッキを有罪へ導いた刑事、本作の作者だとされていたカンペンドンクの世界最大のコレクションを有するドイツ・ペンツブルク美術館館長など、本件に関わるありとあらゆる人々からのコメントもあり、いかに同館が本件について多角的に、そして真摯に向き合っているかがうかがえる。

展示風景より

編集部