科学調査から本展の監修までを手がけた田口は、作品の真贋を判定させて終わりなのではなく、その調査背景や内容を明らかにすることで、作品への新たな向き合い方を模索するきっかけになるという。事実、本展では、通常の美術展覧会ではあまり見られないほどの多くの情報が紹介されており、田口や同館が、本件を通じて作品の真贋について再考する機会をつくり出そうとする意志が随所に感じられる。
また、同館館長・安田篤生は、本件について次のように語る。「今昔および東西を問わず『贋作』が生み出され続け、われわれ美術専門家も欺かれるという歴史と事実をあらためて考え直してみたいという思いから本展開催を決定した。欺かれてしまった自分たちへの戒めだけにとどまらず、芸術における『贋作/偽物と真作/本物』をめぐる議論の場をつくりたい」。
当然贋作は許されるものではないが、芸術において無縁とはいかない重要なテーマである。直に「贋作」を見ながら、作品の真贋について改めて考えるきっかけとしたい。



















