第1章「贋作の歴史」では、古今東西の主な贋作事件が取り上げられ、贋作にまつわる歴史が年表形式のパネル展示で紹介される。贋作問題は、古今東西の美術史にとって決して切り離すことができないことを、過去の実際の事件を知ることで再認識する機会となっている。

第2章「真作?それとも?──作品の外側から分かること」では、同館の古美術の収集事例と真贋を判断する調査方法を詳らかにしている。
本章では、高知では馴染み深い、幕末土佐を代表する絵師・絵金(1812〜1876)が残した作品も例にあげられている。絵金が様式を確立したとされる、土佐の祭礼に用いる二曲屏風には、原則として年記や署名がない。そのため、本人の筆で描かれたものか、明確な判別が難しいことで知られる。しかし実際作者の特定が曖昧なものであっても、芝居絵屏風を「絵金の作品」として親しんできた土佐文化は、「真筆か否か」だけが作品価値に直結するわけではないことも示している。
真作と「そうでないもの」の線引きの難しさについて探りながら、同時に芸術作品における「真作」の不確かさや価値のとらえ方についても再考するきっかけとなるだろう。




















