ロビーからエレベーターに乗り客室フロアへ出ると、エレベーターホールにはフロアごとに色が異なる和紙の作品がかけられている。通常、漆器を塗る前には、漆の不純物を除くために和紙で濾す過程がある。本作はその使用済み和紙を用いており、作業後に捨てられるはずだったものを作品へと変化させている。方向指示サインは、漆塗りに使われるヘラを使用。伝統工芸を影で支え続けた技術が前面に押し出された作品である。


客室は、7室のスイートルームを含む全253室が用意され、1室ごとに金沢の伝統的な要素を感じさせるデザインとなっている。客室に入る前に、ポップな色彩のルームサインに注目したい。九谷五彩で彩られた九谷焼でつくられており、全13種類のデザインとなっている。

客室内のベッドルームには、和紙を用いた作品が飾られている。金沢の路傍に和紙を敷き、実際の道の割れやマンホールのかたちをかたどったという。そのうえを子供が下駄で遊んだ様子を思わせる模様が、金箔であしらわれた作品だ。この作品にも使われている「群青」という色は、金沢の土地にとって大事な色のひとつだという。加賀藩前田家ゆかりの成巽閣にある群青の間に由来し、高貴で鮮やかなこの色彩は、古くから好まれ用いられてきた。





















