ロビーがある3階エレベーター内にも作品がある。カラフルな水玉模様は、加賀友禅の制作工程でつくられる色見本が拡大されたものだ。 雨が多い金沢の様子を表した本作からは、この土地ならではの特徴を、尊重し楽しむ姿勢がうかがえる。なお、ロビーから客室フロアへ向かうエレベーター内でも本作を見ることが可能だ。

エレベーターが開きホールに出るとすぐに、泉鏡花へのリスペクトを感じる作品が出迎える。「向かい干支の動物を集めると出世する」という金沢の言い伝えを信じていた母から水晶のうさぎをもらったことから、泉は生涯にわたりうさぎの置き物を集めていたという。館内には随所にうさぎモチーフの作品が点在している。

また、同じホールには、三味線の胴に張る白い革と、郵便配達のバッグから譲り受けた黒い革を使った作品も展示されている。いずれも金箔の箔打ちに使用された道具で、金沢の土地に伝わる工芸の制作過程で利用したものを、さらに再利用してつくられたアートワークだ。

3階のロビーにもいくつかの作品が展示されている。金沢市生まれの箔デザイナー・高岡愛による揺れる金箔のアートワークが圧倒的な存在感を放つ。金箔の動きを見せるような工夫がされた作品で、来館者は本作に触ることもできる。

また、能登半島地震の復興支援の一環として、伝統工芸の再生と新たな創作の場づくりに取り組む株式会社CACL (カクル) が展開するプロダクトブランド「KAKERA」との共同プロジェクトとして制作した《KAKERA 5》も展示されている。本作品は、2024年の能登半島地震で破損した九谷焼のほか、製造工程で規格外となった白磁など、様々な背景を持つ陶磁器片が使用されている。また台座には、輪島塗の技法が施されている点にも注目したい。今年8月、同館に追加された新たなアートピースだ。




















