「浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA」が開幕。避暑地で見る写真の現在地【2/4ページ】

 加納俊輔、迫鉄平、上田良によるユニット「THE COPY TRAVELERS」は、会場中心部にある2階建ての巨大な建物の中央にインスタレーション《旅するOctagon》を展示。古本から切り出された風景や印刷物、オブジェなど、バラバラな文脈のものがコラージュされ、新しい風景を生み出している。

展示風景より、THE COPY TRAVELERS《旅するOctagon》(2025)

 ロッテルダムを拠点に活動するサンデル・クースはAIを使った興味深い作品を見せる。祖父母のアルバムから、祖父が第二次世界大戦中にインドネシアで生まれたことを知った作家は、1940〜90年代のアルバムをもとに、AIによって自らの家族の歴史を拡張させた。木製パネルに印刷された《POST》に映るのはすべて架空のものであり、デジタル時代における記憶のあり方を問いかける。

展示風景より、サンデル・クース《POST》(2023-24)

 2015年に原発事故から29年を迎えたウクライナ・チェルノブイリを訪れた小原一真。本展では、そこで譲り受けた被爆したフィルムを使い、母胎の中で被曝した女性や廃墟などを撮影した「Exposure」シリーズを中心に、戦前のウクライナで撮影した日常のスナップ、現在の戦時下のアーカイブ写真を用いた写真集などで構成。アクリル板に写された儚い像は、薄れゆく負の歴史に対する記憶を可視化させるとともに、見るものの想像力を喚起させる。

展示風景より、小原一真の作品群

 富安隼久は、ライプツィヒの動物園で見たサイの動きをとらえた8点からなる《♾️》を展示する。動物園でサイを観察していた富安は、柵の中でサイが歩くルートが「♾️」あるいは「8まの字」の形となっていることに気づいたという。その理由は不明だが、富安はその歩みを8枚の写真にとどめた。木製ケースに納めた見せ方も秀逸だ。

展示風景より、富安隼久《♾️》(2018)

編集部