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「つくるよろこび 生きるためのDIY」(東京都美術館)開幕レポート。つくる、その目的の先にあるもの【6/7ページ】

 久村卓は1977年東京都生まれ。多摩美術大学彫刻学科卒業。彫刻の男性性や権威性に疑問を抱き、軽さを重視した制作を模索するなかで、ハンドメイドからDIYクラフトまで、美術の周縁に位置する技法や素材を積極的に採用し作品を制作してきたアーティストだ。

 「着られる彫刻」は、既製品である古着を中心に据えた「彫刻」作品だ。例えば、例えば《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirts》(2025)は、ラルフ・ローレンの黄色いストライプの古着のシャツが、台座の上に展示されている作品だ。この台座は久村の手によるもので、そこに古着が乗っているだけでそれが彫刻的になることを示唆している。さらに古着の胸元には、ラルフ・ローレンの乗馬のロゴマークが台座に乗っている刺繍が額に入れられるようにしてつけられており、ここでも作品を作品たらしめる額の存在が主張する。

展示風景より、久村卓《PLUS_Ralph Lauren_yellow striped shirts》(2025)

 こうした、手芸的なアプローチは、例えば制作で使用した絵具のついた雑巾にパッチワークにすることで絵画化する《Plus Painter》や、廃校から譲り受けたハードルや、工事の際に使用するバリケードなどに木材を組み合わせることでベンチ化する「One Point Structure」シリーズなどにも共通しており、硬質で権威的なルールを手仕事によって剥ぎ取っていく手つきが一貫している。

展示風景より、久村卓「One Point Structure」シリーズ

 また、久村はこの展示室で《織物BAR at 東京都美術館》(2025)を展開。このインスタレーションは、BARで酒を選ぶように、企業から提供されたものや古着をほどいたものなどの、様々な糸を選び、それを編み上げてコースターをつくるワークショップに使うことができる。コースターは、たんに可愛らしく実用的なだけでなく、何かを置く「台座」として機能していることにも着目したい。

展示風景より、久村卓《織物BAR at 東京都美術館》(2025)

編集部