第3章「DIYでつくる、かたちとかかわり」では、彫刻的なアプローチに立脚しながら、DIY的な手法で多様な表現活動を展開するダンヒル&オブライエンと久村卓の作品を紹介している。
ダンヒル&オブライエンはロンドンを拠点とするアーティスト・ユニットだ。ふたりは東京都美術館の所蔵する最上壽之による屋外彫刻《イロハニホヘトチリヌルヲワカヨタレソツネ・・・・・ン》(1979)と出会い、感銘を受けたという。ロンドンでは、同作について描写したテキストをもとに、友人や近隣の人々に粘土で造形物をつくってもらった。東京でもこの試みは行われ、こうして生まれた100点以上の粘土作品はすべて3Dプリントで出力。また、ランダムに組み合わせ3Dマケットも作成した。

会場には3Dプリントで出力された、多くの人々が参加しつくり出した「かたち」が並べられている。さらに、ふたりは自分たちのスタジオを原寸大で模した構造物を館内に設置。伝統的な手動彫刻機であるパンタグラフを使用し、3Dマケットを《イロハ〜》と同じ大きさまで拡大したインスタレーション《「イロハ」を鑑賞するための手段と装置──またいろは》(2025)を生み出した。

思いついた方法を次々と実践するようにして制作されたこれらの作品群は、いまも制作中であるかのように展示室に佇んでおり、その制作経緯を考えればさらなる発展の可能性を秘めていると言わざるを得ない。本作は、そもそも、何かをつくるということは、必ずしも目的のためではないことを思い出させる作品だ。手を動かし、思考を働かせて生まれたものが、さらに新たなものを生む土壌となる。これを繰り返す営みの豊かさが伝わってくる。



















