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「つくるよろこび 生きるためのDIY」(東京都美術館)開幕レポート。つくる、その目的の先にあるもの【3/7ページ】

 第2章「失って、立ち上げていくDIY」は、自然災害や経済的困難により多くのものを失った人々が、新たに暮らしを立ち上げていく営みに眼差しを向ける瀬尾夏美と野口健吾の作品を紹介する。

 瀬尾夏美は1988年東京都生まれ。土地の人々の言葉と風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっており、2011年、東日本大震災のボランティアを契機に、映像作家の小森はるかとのユニットで制作を行ってきたほか、被災した陸前高田市で3年間暮らしながら、対話の場づくりや制作に取り組んできた。

展示風景より、瀬尾夏美《うつくしい場所》(2015)

 会場ではまず、2011年の東日本大震災の発生した当日に瀬尾が描いた作品が展示される。この後、瀬尾は実際に被災地に赴き、現地の人々が語る体験に耳を傾けながら被災地の「さみしさ」に寄り添いドローイングを残していった。

展示風景より、瀬尾夏美《輪っか》(2011)

 また、瀬尾は被災地の風景の美しさに目を向けるとともに、かさ上げをして造成される新たな街と、その下にある街の二重性についても思考を続けていく。こうした「二重のまち」についての思索は、やがて2019年の宮城県丸森町の土砂災害、1995年の阪神・淡路大震災や1945年の原爆投下、いま進行している気候変動によっての土地の変化などへと接続。土地の歴史が積み重なり、変化し、そこに住む人々に影響を与えるということの普遍性と、その場所で対話をすることの重要性が改めて鑑賞者の前に示される。

展示風景より、工藤夏実、丸森町の人々《人形劇「やまのおおじゃくぬけ」で使用した人形》(2024)

編集部