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「つくるよろこび 生きるためのDIY」(東京都美術館)開幕レポート。つくる、その目的の先にあるもの【2/7ページ】

 「DIY」を本展のテーマに据えたことについて、藤岡は次のように説明する。「東京都美術館は創設100周年を前に『開かれた美術館』であることを意識しながら活動している。その活動を通じて、美術関係者以外の様々な人と関わるなかで、生活や暮らしといった観点から、そこに宿るDIYとその創造性をテーマにした展覧会を開催したいと考えた」。

展示風景より、久村卓《PLUS_LACOSTE_gray striped shirt》(2022)

 展覧会は3章構成。第1章「みることから始まるDIY」では「身の回りのものをよく見る」というDIYの基本を体現しているアーティストとして、若木くるみの作品を展示する。

 若木は1985年北海道生まれ。京都市立芸術大学で木版画を専攻。卒業後、版画という技法を拡張し、自らの身体を版として用いるインスタレーションやパフォーマンス作品など、多様な表現を展開してきた。 

展示風景より、若木くるみの版画作品

 会場では空き缶、干物、ヤカン、ハンガー、ハサミといった若木の身の回りにある素材を版として制作した版画作品が、その版の実物とともに並ぶ。普段見慣れた立体物が、若木の手によって平面に写し取られ、まったく異なる位相を与えられている。

展示風景より、若木くるみの版画作品

 若木が独り暮らしを始めたときから使い続けてきた冷蔵庫を版としてつかった《タワマン》(2025)は圧巻だ。冷蔵庫に貼り付けられてたい展覧会のチケットやアルミホイルなども作品のなかに取り入れられ、写し取られながらタワーマンションが出現した。

展示風景より、右が若木くるみ《タワマン》(2025)

 また《さいごの版さん》(2025)も迫力のある作品だ。紙に切り込みを入れて立体化した食卓のテーブルには様々な料理が並び、そこに若木の自画像のような人物たちが、毎日の食卓を思い出すかのように並んでいる。版を彫るという小さな積み重ねによって生まれた、迫力ある大型作品はDIYの先にある景色を端的に表しているといえるだろう。

展示風景より、若木くるみ《さいごの版さん》(2025)

編集部