「Materia」は、屋久島の深い森を撮影した作品シリーズだ。90年代前半、アメリカのネイティヴ・アメリカンが愛する森を撮影したシリーズ「QUINAULT」を発表した上田。それから20年の時を経て、東日本大震災で自然の脅威を強く意識するようになった上田は、本作で屋久島に赴き、森との対話を試みることで本シリーズを制作した。ほかにも、本展にいくつも展示されている森や木をとらえた上田の写真からは、長い時間をかけて、写真という手法で生命と向き合う上田の仕事がうかがえる。

ポートレートも上田の作家性を語るうえでは欠かせない仕事だ。会場では吉永小百合、樹木希林、蒼井優、宮沢りえといった俳優、ジョルジオ・アルマーニ、草間彌生、赤瀬川原平、吉増剛造、荒木経惟、北杜夫、安岡章太郎、山田風太郎、パティ・スミス、レイ・チャールズ、ロバート・メイプルソープといったデザイナーや作家、アーティストなどのポートレートが並ぶ。いずれの被写体もどこかパブリックに共有されたイメージとは異なる、人物のふとした瞬間をのぞくような奥深さが宿っている。


自身にとっても、葉山は思い出深い場所だという上田。海の音が聞こえる夏の本館で、上田が自然や人と対峙してきた足跡をたどり、みてはいかがだろうか。




















