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「上田義彦 いつも世界は遠く、」(神奈川県立近代美術館 葉山)開幕レポート。写真から遠くにあるものを思う【2/3ページ】

 展覧会はチベットの人々を撮影した最新作から始まる。放牧をしながら暮らす家族たちの日常を覗き込むような情景や、どこまでも続く牧草地と対峙する人々の姿は、その距離を感じさせない親しみ深いものとして、来場者を引き込む。

展示風景より、「Tibet」シリーズ(2024)

 続いて女優・満島ひかりやチャン・ツィーのポートレート、リンゴをとらえた静物写真などが並び、多彩なモチーフを扱ってきた上田の幅広さが感じられるだろう。

展示風景より

 以降、展覧会は上田がこれまで手がけてきた各シリーズを、時代をゆるやかに遡るように展示していく。例えば「Apple Tree」は、群馬の山中の農家のリンゴの木を被写体としたシリーズだ。淡い色調と、被写界深度の浅さが生み出す、枝葉の奥行きや錯綜感は、生命の瑞々しさや複雑さを体現しているようだ。

展示風景より、「Apple Tree」シリーズ(2017)

編集部