第10章「イスラエル建国」は、第二次世界大戦後にユダヤ人たちが自らの国家として建国したイスラエルを旅したキャパの写真を展示。キャパは新たな国家を樹立したユダヤ人たちに共感をしているが、この土地がパレスチナ人の犠牲のうえで成り立っており、2025年現在においても血が流されていることを私たちは知っている。

最後となる第11章「終焉の地 インドシナ半島」は、フランスがベトナム独立同盟(ベトミン)の攻勢によって、撤退を余儀なくされる現場をとらえたキャパの足跡が紹介されている。1954年、ここで、キャパは地雷によって命を落とす。最後に展示されている《ナムディンからタイビンへの道》が、キャパが死去する直前に撮影した写真となった。インドシナの戦禍は、キャパの死後も、ベトナム戦争、そしてカンボジア内戦へと悲惨な暴力として連鎖していく。沢田教一や一ノ瀬泰造といた日本人写真家もまた、キャパの後を追うようにこの地に赴き、命を落とした。

キャパは「人間を取りまく状況を少しでもよいものにしよう」という思いのもと、シャッターを切り続けたという。本展では、20世紀の歴史が戦争とともにあったことを強く印象づけるとともに、戦後80年のいま、キャパの願いがはるか遠いところにあることを思わずにはいられない展覧会となっている。