“インテリア”が究極のかたち
──日本国内においては2年ぶり、また東京の美術館においては初の個展となった「アレック・ソス 部屋についての部屋」展では、初期の代表作から世界初公開となる最新作「Advice for Young Artists」(2024)まで、61点の作品が紹介されています。しかし、写真家としての地位を確立された処女写真集の『Sleeping by the Mississippi』(2004)をはじめとしたロードトリップ・フォト、つまり長距離を車で旅しながら撮影したシリーズを多く制作されてきたことから、今回の展覧会が“部屋”をテーマに構成されていることを意外に感じる方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか? そこで、最初に本展のテーマや意図についてお教えください。
私個人のプロジェクトにおいては、いつもイメージを届けるために基本的な枠組みを設定しています。そして同時に、鑑賞者のみなさんが自分なりの見方で受け止め、また考えていただけるような余地を残すことを心がけているんです。今回の展覧会では、写真を撮り始めたごく初期の頃の写真から最新作までが含まれていますが、たんにキャリア全般を網羅するような内容にはしないということが、企画を進めるうえで重要なポイントとなりました。そして、ここ数年、私の作品について考えていたことのひとつは、風景やポートレイト、静物などを撮っていたとしても、“インテリア”が究極のかたちなのではないか、ということでした。そこで、自身にとって大きなターニングポイントとなったシリーズ作品「I Know How Furiously Your Heart is Beating」(2019)をベースにしながら、“部屋”を意識して展示を構成していくことにしたんです。
──「Sleeping by the Mississippi」は、ミネソタ州北部からメキシコ湾へと流れる、全長約3,780キロメートルのミシシッピ川流域を、およそ3年間をかけて車で旅し、8×10の大判フィルムカメラで撮影したシリーズですが、この作品においても“室内空間”が鍵となっていたのでしょうか?
ミシシッピ川流域を旅しているときの私の目標のひとつは、様々な人々に出会うこと、そして彼らの家に入らせてもらうことでした。そうすることで、互いの間に親近感が生まれ、深い結びつきを感じられるようになるからです。そうやって室内で撮った写真は、部屋の主人である本人の姿が写っていなくても、その方の“人となり”が十二分に汲み取れるような肖像として立ち現れるときがあるんです。
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