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「ある⽇」(座間市役所/ビナウォークほか)開幕レポート。誰かと向き合うことを福祉として真摯に考える【4/6ページ】

 飯川雄大は市役所という施設ならびにその確立されたシステムに揺さぶりをかけるような大規模インスタレーション、「デコレータークラブ」シリーズの《0人もしくは1人以上の観客に向けて》を展開した。

展示風景より、飯川雄大《0人もしくは1人以上の観客に向けて》

 飯川は兵庫県出身で神戸を拠点に活動してきた。成安造形大学芸術学部情報デザイン学科ビデオクラスを卒業し、認識と現実のあいだにあるズレを可視化する新たな体験を提案する「デコレータークラブ」シリーズが代表作といえるだろう。

 飯川は今回、2階にある相談支援の窓口にハンドルを設置。そこから伸びたワイヤーは窓を通じて建物外を経由し、7階展望スペースの屋上へと至らせ、さらにワイヤーの先に稼働する機構につながる。相談支援の窓口は通常通りの業務が行われており、ここで大きな音をたてるハンドルを回すこと自体が稀有な体験だ。その行為の過程は、7階の機構で一部見られるが、その結果を見るのはまた別の場所となる。

展示風景より、飯川雄大《0人もしくは1人以上の観客に向けて》
展示風景より、飯川雄大《0人もしくは1人以上の観客に向けて》

 また、市役所の外に出て上を見ると、ワイヤーにぶら下がったバッグが見える。このバッグは、1階玄関に誰かの忘れ物であるかのように放置されたバッグと対応している。放置されたバッグを持ち上げようとすると、そのあまりの重さに驚くだろう。視覚から獲得するイメージが、体感と大きくずれていることが本作のおもしろさだ。この重さを体感したあとに、建物の外に吊り下げられたバッグを見ると、その重さがどのくらいなのか想像を巡らせることになるはずだ。

展示風景より、飯川雄大《0人もしくは1人以上の観客に向けて》
展示風景より、飯川雄大《0人もしくは1人以上の観客に向けて》

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