多様な可能性や視点を想像する起点として。飯川雄大による新作が霧島アートの森で発表へ

関わる者の思考を誘発させるような作品を制作してきた美術家・飯川雄大による個展「デコレータークラブ:未来のための定規と縄」が鹿児島県霧島アートの森で開催される。会期は7月14日〜9月10日。

彫刻の森美術館「デコレータークラブ:同時に起きる、もしくは遅れて気づく」展示風景より、飯川雄大《デコレータークラブ—ピンクの猫の小林さん》(2022)  撮影=Takafumi Sakanaka

 関わる者の思考を誘発させるような作品を制作してきた美術家・飯川雄大(1981〜)。その個展「デコレータークラブ:未来のための定規と縄」が鹿児島県霧島アートの森で開催される。会期は7月14日〜9月10日。

 飯川は兵庫県出身で、神戸を拠点に活動する美術家。成安造形大学芸術学部情報デザイン学科ビデオクラスを卒業し、2007年からは認識と現実のあいだにあるズレを可視化しながら、その場と鑑賞者の関係を扱った新たな体験を提案する「デコレータークラブ」シリーズを展開してきた。代表作には、鑑賞者が作品に能動的に関わることで変容していく物や空間が、別の場所で同時に起きる事象とつながる《0人もしくは1 人以上の観客に向けて》(2019〜)や、誰かの忘れ物かのような《ベリーヘビーバッグ》(2010〜)、全貌をとらえることのできない大きな彫刻作品《ピンクの猫の小林さん》(2016〜)などが挙げられ、鑑賞者の行為によって起きる偶然をポジティブにとらえ、思考を誘発しながら展開する作品を制作している。

 本展では、定規と縄をモチーフにした飯川の新作が発表。一見遊びのようにも思える鑑賞者の身体的行為を取り込み、展示室だけでなく野外広場へとつながる大規模なインスタレーションが展開されるという。ほかにも、《ベリーヘビーバッグ》や《ピンクの猫の小林さん》など、飯川が継続して発表している作品も織り交ぜながら展示され、ひとつの「できごと」の背後に広がっている多様な可能性や視点を想像するきっかけが創出される。

飯川雄大《デコレータークラブ—未来のための定規と縄》の制作風景より 2023 撮影=Takehiro Iikawa
彫刻の森美術館「デコレータークラブ:同時に起きる、もしくは遅れて気づく」展示風景より、飯川雄大《デコレータークラブ—0人もしくは1人以上の観客に向けて》(2022) 撮影=Michio Yamashita

 なお、本展の関連イベントでは、霧島アートの森がある鹿児島県の地理的特性に着目。台湾、韓国、フィリピン、それぞれのアートシーンに精通したキュレーターらによる東アジア・東南アジアという広い視野から飯川作品の解釈を試みるトークセッションや作家や同館学芸員によるギャラリーツアー、ワークショップなども実施が予定されている。詳細は同館公式ウェブサイトで確認してほしい。

編集部

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