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「近藤亜樹:我が身をさいて、みた世界は」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)開幕レポート【2/5ページ】

 プロローグのような位置づけの展示室を抜け、幅9m超の新作絵画《ザ・オーケストラ》が登場する隣の展示室が最初のハイライトとなる。

展示風景より、《ザ・オーケストラ》(2024)の部分

 山形から仙台にバスで通うことがあり、高速バスから見える1本の黒く焦げた木が着想源となった。「森の方を見ると夕陽にたなびく雲があり、バスが動くと、電線が五線譜のように現れ、おそらく落雷によって黒焦げになった木が指揮者のように思えた」ことをきっかけに、オーケストラの絵を描くことを決めたという。

 そのときにバスで聞いていた音楽が、小澤征爾のオーケストラだった。「小澤さんのオーケストラの演奏する音楽は、音が喜んでいるんです」と近藤。程なくして小澤征爾が館長を務める水戸芸術館から個展の依頼が届いたのは、ある種の運命だったのかもしれない。生前の小澤と出会い、言葉を交わすことはできなかったが、「小澤さんにとって音はどんなかたちでどんな色なのか」という問いを胸に、《ザ・オーケストラ》を制作していると、「音はかたちでも色でもなく、耳を塞いだときに感じる響きだった」ことに気づいたという。その響きをうねりと動きで表現し、幅9mを超える大作をかたちにした。制作の起点となった焦げた木を近藤は「音が固まったもの」ととらえ、作品のなかでは火の鳥のように躍動する元の姿を想像して描いた。

展示風景より、《ザ・オーケストラ》(2024)
展示風景より、《ザ・オーケストラ》(2024)の部分

 作品の下にはステージが設置されているが、きっかけとなったのは、展示構成を行った青木淳からの提案だ。水戸芸術館にはホールがあり、そこにはステージがあるのだから、ジャンルを超えた文化体験という意味でも、近藤の展示空間にステージを設置したらどうだろうかと。来館者がそこに上り、絵を近くから鑑賞することができることに加え、会期中には関連イベントとして音楽家を招いて演奏会を行うことも予定している。

編集部

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