サンフランシスコ・アジア美術館で2012年に開催された企画展「PHANTOMS OF ASIA: Contemporary Awakens the Past」で幅10メートルを超える大作絵画《山の神様》を出展してデビューを飾った近藤亜樹。水戸芸術館現代美術ギャラリーでスタートした今回の個展では、22年以降に制作された作品24点と、本展のために制作された新作64点のあわせて88点を展示する。
展覧会を担当するのは、水戸芸術館現代美術センター学芸員の後藤桜子。展示構成は、1990年に水戸芸術館が開館した当時、磯崎新アトリエに勤務し、現場責任者として設計から竣工にまで関わった青木淳が手がけた。意外にも、同館で青木が展示構成に携わるのは初めてのことだという。
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「サボテン」と題されるシリーズから5点が、最初に来場者が出会う作品だ。なぜサボテンを選んだか。普段は作品ができるときに、作品から声が聞こえるのだと近藤はいう。「ここで終わりだ」「もう触るな」といった声がしたときに、作品が完成するのだが、今回の展示に向けて制作を始めたものの、なかなかその声が聞こえない状態が続き、ホームセンターで一点の枯れかかったサボテンと出会ったことが転機になったという。
「モグラのように毛だらけの枯れかかったサボテンをうちで引き取ることにして、水をやり始めたら、10日間ですごく大きくなっていったんです。彼らは、本当に少しの水で生き延びようと成長する。そうすると今度は自分の身をさいて、そこに子ができ、今度は自分を成長させるのではなく、どんどん自分の体をさいて、新たに子を増やしていく。
私は水戸芸術館から個展の話をいただいて、自分がどこまでできるのかやってみたいと思ったわけだけど、挫けてしまいそうになったことがなんだか恥ずかしく感じられました。我が身をさいて、どれだけ世界を開いていけるか。そう考えて個展のタイトルを考え、『サボテン』のシリーズを増やしていきました」。
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