「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」(大阪中之島美術館)開幕レポート

大阪中之島美術館で、チューリッヒを拠点に活動した日本人芸術家の吉川静子と、そのパートナーであり、スイスを代表するグラフィックデザイナー、タイポグラファーであるヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの軌跡をたどる大回顧展「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」がスタートした。会期は2025年3月2日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より

 大阪中之島美術館で、「Space In-Between:吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン」がスタートした。会期は2025年3月2日まで。キュレーションを担当したのは、平井直子(同館主任学芸員)、ラース・ミュラー(Lars Müller Publishers主宰/吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン財団理事長)、ガブリエル・シャード(美術史・建築史家/チューリッヒ工科大学講師/吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン財団理事)。

 吉川静子(1934〜2019)は、デザイナーから芸術の道へと転身した日本のアーティスト。ウルム造形大学で学び、コンクリート・アートのシーンに身を置いたのち、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンと結婚。スイス・チューリッヒを拠点にその活動を行った。海外を拠点にしていたこともあり、日本でその活動が紹介される機会はあまり多いとは言えず、晩年の2018年に六本木のAXISギャラリーで開催された個展は吉川にとって日本における30年ぶりの発表の機会となった。

 いっぽうのヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(1914〜96)は、スイスを代表する国際的なグラフィックデザイナー/タイポグラファーだ。60〜80年代には、亀倉雄策などの日本のデザイナーと親交を深めつつ、デザイン学校や美術大学で教鞭をとり日本のデザイン教育にも貢献した。とくに、紙面における文字組みと構成の方法論である「グリッドシステム」は、デザイン史上の金字塔とも言うべき理論として今日まで大きな影響を与え続けている。

チューリッヒにて 1965年頃
Copyright and courtesy of the Shizuko Yoshikawa and Josef Müller-Brockmann Foundation

 同展は、この2人の活動に焦点を当てる国内初の大規模な回顧展だ。タイトルの「Space In-Between」は、空間や余白の考え方に特徴のある2人の作家性や、パートナーでありながらも、個々の芸術家・デザイナーあった2人の距離感や関係性を表すものでもあるという。

 本展の開催経緯やその意義について、学芸員の平井は次のように語る。「大阪中之島美術館はアートとデザインを主軸とした展覧会やコレクション活動を行っている。開館前の2012年にサントリーポスターコレクション1万8076点の寄託があり、そのうち8点がミューラー=ブロックマンによる作品であった。そして2019年にパートナーの吉川氏の訃報を受けて、2022年度に両者の作品を収集、本展の開催を吉川静子とヨゼフ・ミューラー=ブロックマン財団に提案し、実現することとなった」。

編集部

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