1996年のヨゼフ・ミューラー=ブロックマン逝去後、大きな精神的ダメージを受けた吉川は、2人が過ごしたアトリエを離れて3年にわたりローマで滞在制作を行った。この時期の作品はこれまでと異なり、燃えたぎる太陽やゆらめく海を想起させるような具象的なものとなっている。

ローマからスイスに戻ったあとは、シルクロードをテーマとしたシリーズを手がけるようになる。晩年には「宇宙の織りもの」シリーズで見られた十字のモチーフは消え、代わりに登場したドットで空間性や動きが表現されるようになっており、その作家性の極まりは目を見張るほどだ。


