The City of Genius
ファッション編集者でありスタイリストであるエドワード・エニンフルが見せたのは、3つのシーンからなる近未来的な世界。砂漠から氷山まで、極限の状況が映画のセットのように出現し、そこにオールブラックの10種類のルックをまとった人物たちが象徴的な姿を見せた。
藤原ヒロシによるプレゼンテーションは、今回の「The City of Genius」でもっとも静謐な空間として強い存在感を示した。イギリスの彫刻家リチャード・ウィルソンとのコラボレーションによって生み出された「Looking Glass, 2024」と題されたミニマルな空間は、濃く黒い液体で満たされ、天井から吊るされたルックを鏡のように反射させる。 “still waters running deep(深い川は静かに流れる)”をテーマにしたMoncler x FRGMT(モンクレール × フラグメント)の世界観が見事に表現されたと言えるだろう。
アーティストとのコラボレーションとしては、ルル・リーも素晴らしい作品を見せてくれた。鏡張りの部屋の中で、無限に広がっていくコレクション。それは、光、反射、知覚を探求し、AIピクセルからイマジネーションを具現化したフィジカルで着用可能なものへと至る、ルル・リーのクリエイティブな旅を想起させるものだ。Moncler x Lulu Li(モンクレール × ルル・リー)のプロジェクトは、誇張されたボリュームとミニマルな禅のリファレンスからインスピレーションを得ているという。
ルーシー&ルーク・メイヤーによるJil Sanderは、「無限のショウ」というコンセプトのもと、清らかで光り輝く円形の空間の壁を360度のスクリーンで覆い、そこに自然の美しさを表現した映像を映し出した。自然からインスピレーションを受けた、丸く柔らかなシルエットとボリュームが強いインパクトを与えるコレクションは、2つのブランドの完璧な融合を示すものとなった。
このほかThe City of Geniusでは、“CO-CREATION”されたアパレルコレクションと「Gクラス」の2つの新しい解釈を披露したMercedes-Benz and Nigo、ドナルド・グローバーのギルガファームからインスピレーションを得たファームハウス、映画のようなサーキットを出現させたPalm Angels、山のDNAにインスピレーションを得たシルバーのセットと現実の映像とAIが生成した映像の融合を見せたA$AP Rocky、自然の成長により再生された廃墟の村を表現したWillow Smith、そして全天候型スチール製サンクチュアリ(聖域)を備えたリック・オウエンス マウンテン“Refuge”など、多彩なコラボレーションのかたちが提示され、モンクレールというブランドの拡張性の高さ、創造性の無限の可能性を実感させるものとなった。
なお、The City of Geniusでは中国を代表するアーティストのシュ・ビン(徐冰)によって構築された独自の言葉が、イベント、ショウ会場、ライブストリーミング、そして付随するキャンペーンの随所に織り込まれ、このメトロポリスのリアリティをより強硬なものにしていたと言えるだろう。
このイベントのためにデザインされた音と映像に囲まれ、ヘンリー・ラウによる唯一無二のライブで幕を閉じたThe City of Genius。ここで発表されたモンクレール ジーニアスのコレクションは10月24日発売のMoncler x Lulu Liを皮切りに、25年にかけてが順次発売される予定だ。
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