ほかにも若冲の名作ズラリ
なお本展では《果蔬図巻》以外にも見どころは多い。その筆頭が、《果蔬図巻》と並んで展示される版画の巻物《乗興舟》(1767頃)だろう。
本作は、今年5月に福田コレクションに加わったばかりのもの。若冲が下絵を、梅荘顕常(大典)がこれに短い文をつけたもので、ともに舟で京から大阪へ下る間に見た風景を版画で表現したものだ。白黒の作品ながら、大典の短辞をたどることで、頭の中に音や色が再現されるようにつくられたもので、かつてふたりがたどった船路を追体験してほしい。
あわせて注目したいのは、2019年春に発見された作品《蕪に双鶏図》(18世紀)だ。若冲が30代前半、青物問屋の主人をしていた頃の作品で、蕪畑のなかにつがいの鶏が描かれている。これまで知られているなかでは最初期の作品であり、代表作《動植綵絵》にもつながる要素が見受けられる。
このほか、若冲にとっては珍しい人物画である《呂洞賓図》(18世紀)、中国製の紙の特色を生かした「筋目描き」で細部が表現された《鯉魚図》《鳳凰図》《霊亀図》(いずれも18世紀)、近年新たに確認された《鶏図押絵貼屏風》(1979)など、本展には約30点もの若冲作品が並ぶ。
加えて、若冲が影響を受けた中国人画家・沈南蘋(しんなんぴん)やその弟子の熊斐(ゆうひ)、同時期に京都・大阪で活躍した画家・円山応挙(1733~1795)や曽我蕭白(1730~1781)などの作品も同時に紹介されるこの展覧会。《果蔬図巻》を中心に、若冲にどっぷりと浸ってみてはいかがだろうか。なお、《果蔬図巻》は本展終了後、さらに約1年をかけて調査・修復が行われる予定だ。