若冲の新発見絵巻《果蔬図巻》。京都・福田美術館で一般公開【2/3ページ】

日本へ里帰りした経緯と真贋

 福田美術館によると、本作はもともとヨーロッパの個人が所蔵していたものだという。ヨーロッパに流出した経緯はわかっておらず、これまでのオークションカタログなどにも一才の記載がないという。2023年2月に大阪の美術商から福田美術館に画像確認の依頼があり、同年7月に真贋鑑定を行ったうえで、翌8月にオークション会社経由で所有者から同館が購入。その後、4ヶ月をかけて剥落などの応急処置が施された。

 真贋については、巻末の署名や印が他の作品と一致すること、本作の翌年に描かれた《菜蟲譜》と表現技法が酷似していること、そして若冲と親しくしていた相国寺の僧・梅荘顕常の跋文(ばつぶん)があることなどが真筆の根拠となった。

《果蔬図巻》の跋文

 作品はキクダイダイから始まり、柑橘類やモモ、リンゴ、パッションフルーツ、ナス、ミョウガ、ブドウ、ビワ、ザクロ、ライチ、レンコン、スモモ、クリ、トウモロコシ、カキ、ニホンカボチャ、トウガンなど、当時としては珍しい果物・野菜を含む52種類が次々と描かれている。

展示風景より、伊藤若冲《果蔬図巻》(1790年以前)
展示風景より、伊藤若冲《果蔬図巻》(1790年以前)の部分

 その配置に四季などは関係なく、若冲の好きなように配置されている点が特徴的だ。また、描かれた野菜や果物の大部分や淡い彩色法は《菜蟲譜》と共通するという。

 巻物の最後には上述の梅荘顕常が直筆で書いた跋文があり、そこで本作を讃えるとともに、顕常と若冲の旧知である大阪の森玄郷という人物からの依頼で描かれたこと、森の没後に息子の嘉続から跋文の依頼を受けたことなどが記されており、貴重な資料ともなっている。

編集部

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