東京藝術大学大学美術館で現在開催中の特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」。その後期展示が8月30日に開幕した。展示替えを経て新たに展示されるのは、江戸時代の画家・伊藤若冲による代表作のひとつで、昨年7月に国宝指定もされた《動植綵絵》全30幅のうちの10幅だ。(前期展示のレポートはこちら)
京都の相国寺に所蔵され、1889年に宮内庁に献納された《動植綵絵》は、御物として一般から隔離されたことにより、しばらくその存在を忘れ去られていた。第二次世界大戦後、アメリカのコレクターであるジョー・プライスが若冲の作品を熱心に買い取り、一大コレクションを築いたことがきっかけで再評価されるに至った。
本展では、藝大美術館ならではの取り組みとして、《動植綵絵》に使用している照明を新調。その色温度を白く調整をして当てている。これにより、若冲が描いた緻密な筆使いや白の色幅をしっかりと鑑賞することができるという。
《動植綵絵》以外にも、近代の皇室御物が多数展示替えを経て登場した。普段展示することが難しい、大きく、珍しい作品や、秋の季節にふさわしい作品が選定されている。
9月6日からは三跡のひとり、小野道風による国宝《屏風土代》も公開される。平安時代中期の「和様」と呼ばれる日本独特の書体や、和様の書のお手本とされた道風の伸びやかな書も、あわせて鑑賞していただきたい。