今年10月、京都・嵐山に誕生した福田美術館。琳派から円山四条派、京都画壇の作品を中心とした豊かなコレクションを誇る同館で、「若冲誕生~葛藤の向こうがわ~」展が開催される。会期は2020年3月28日~6月21日(展示替えあり)。
伊藤若冲(1716~1800)は京都錦小路の青物問屋「枡屋」の長男として生まれ、23歳で亡くなった父に代わり家業を継ぐ。30代では家業のかたわら絵を描き、仕事と制作のあいだで葛藤を抱いたが、大典禅師をはじめとする禅僧や支援者たちの援助もあって40歳で絵の道に専念することとなった。
若冲は隠居後の42歳頃からおよそ10年かけ、30幅からなる極彩色の代表作《動植綵絵》を制作。同時期に多くの水墨画を描き、その後は版画の技法による《乗興舟》を手がけるなど、85歳で亡くなるまで新しい技法や表現を探求し続けた。
本展で一番の見どころとなるのは、新たに発見された伊藤若冲最初期の彩色画《蕪に双鶏図》。これまでは若冲が「景和」と名乗っていた時期に制作された《雪中雄鶏図》(細見美術館蔵)が最初期のものとされていたが、《蕪に双鶏図》はそれ以前に制作された可能性があるとして注目を集めている。
本展では、若冲作品約40点に加え、曾我蕭白、円山応挙など個性あふれる同時代の画家たちの作品も展示。また若冲に影響を与えた禅僧や画家たちを取り上げ、若冲作品の魅力と背景に迫る。若冲の秘蔵作品に加えて、18世紀京都画壇の秀作を紹介する本展を、新たな美術館で楽しみたい。