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「西川勝人 静寂の響き」(DIC川村記念美術館)開幕レポート。日本初の回顧展【3/3ページ】

 トップライトが設けられたもっとも巨大な展示室(203)。ここでは同館史上初めて、トップライト自然光のみがすりガラスを通して降り注ぎ、作品と空間を照らす。通常、展示照明は見られる対象としての作品を強調するが、本展示では鑑賞者と鑑賞者と作品の関係を中立のものとする試みが行われている。

展示風景より、白い塀が《ラビリンス断片》(2024)

 展示室には高さ1メートルの白い塀が巡らされており、それが空間を9つのセクションに分けている。この塀自体も巨大なひとつの作品《ラビリンス断片》(2024)で、空間全体を作品化したともいえる、西川の建築にも携わる側面が反映された構成だ。塀は空間を分断しつつも、その低さゆえに空間同士をつなげる役割も果たす。また彫刻作品の台座として機能することも大きな特徴だ。

展示風景より、西川勝人《キオッジャ》(2023)
展示風景より、西川勝人《痕跡》(2011)

 周囲の壁にはドイツの湿地帯の空を撮影した写真が並び、西川の陰影に対する思考を体現するような色合いを見せる。

 展示室中央では、胡蝶蘭を基本に7種の本物の花弁によって構成された《秋》(2024)がほのかな香りを放つ。これは会期中も交換されることはなく、白い花弁は徐々にその姿を変えていく。西川の作品でも珍しい、時間を取り込んだ作品だ。

展示風景より、西川勝人《秋》(2024)

 担当学芸員の前田は、本展開催に際しこう語る「西川にとって、光とそこから生まれる陰影は制作において重要な要素。光は作品を浮かび上がらせる媒体としてではなく、周囲の状況と馴染ませるためのもの。独特の光と陰影への思考を実感してもらいたい」。

 DIC川村記念美術館の展示室の特性を存分に活かし、空間と作品が響き合うように構成された本展。休館前にぜひ足を運び、その「静寂の響き」に身を置いてほしい。

編集部

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