1980年代よりレイヴやゲイコミュニティのパーティーなど若者文化を題材にした写真作品を発表してきたドイツ人のアーティスト、ヴォルフガング・ティルマンス。その個展「Moments of life」が、表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で開幕した。会期は6月11日まで。
本展は、パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトン(FLV)が主催する「Hors-les-mur(壁を越えて)」プログラムの一環として開催されたもの。FLVは、2007年よりティルマンスの作品を収集しており、その数は現在30点を超えるという。本展では、そのなかから厳選された21点が並ぶ。
展示作品は、ポートレート、静物画、風景画といった3つのジャンルに大きく分けられる。ポートレートのなかでは、背後から撮影された《Haircut》(2017)や、古代彫刻を思わせるトルソを主題にした《Torso》(2013)、エドゥアール・マネの名作《草上の昼食》を彷彿させた《Summer party》(2013)のほか、鏡面と前景に自身の姿が映り込んだセルフポートレート《London Olympics》(2012)などが展示されている。
静物画は、ティルマンスの作品における重要なテーマのひとつ。本展では、オランダ絵画黄金時代のコンポジションを想起させる《Still Life, Bourne Estate》(2000)や、観葉植物や花を被写体にした《Zimmerlinde (Michel)》(2006)《Hanging Tulip》(2020)、Wi-Fiボックスや電気ヒーターを写した現代的な雰囲気が感じられる《Still Life, Bourne Estate II》(2002)、そして2015年の国立国際美術館での個展に際して大阪のホテルでとらえた《Osaka still life》(2015)などが紹介。
また、自然もティルマンスの作品に頻出するテーマ。《Adalbert Garden, Winter》(2009)や《Shoe (grounded)》(2014)などの作品では、自然と人間や都市との関係性が表現されている。
なお、1月28日にポーラ美術館で開幕した「部屋のみる夢 ― ボナールからティルマンス、現代の作家まで」展(〜7月2日)においてもティルマンスの作品10点が紹介。写真やイメージの創造の境界線を拡張し続けるティルマンスのクリエイションをぜひ会場で堪能してほしい。