日本最大のアートフェアとして歴史を重ねてきた「アートフェア東京」が、今年も東京国際フォーラムで開幕した。
14回目となる今回は、ギャラリーのブースが集まる「Galleries」の平均面積が前回比120パーセントに。それを象徴するように、KOTARO NUKAGAではロンドンとメキシコシティーをベースに活動するコンセプチュアル・アーティスト、ステファン・ブルッゲマンの巨大な新作を通路に向けて展示。日本のフェアではあまり見られない大胆なプレゼンテーションが人目を引いていた。
またギャラリーアンザイでは、Instagramで194万人ものフォロワーを持つグラフィティ・アーティスト、Mr.Doodle(ミスター・ドゥードゥル)がライブペインティングを披露。下書きなしで迷うことなく線を描き続ける様子は、フェア会場でも大きな注目の的となった。
これまでの「Galleries」は、ホールEの中央通路を境に、現代美術の「サウス・ウィング」、古美術から近代美術の「ノース・ウィング」とジャンルで分断されていたが、今回はその境界線がやや曖昧になった印象だ。
その証拠に、旧ノース・ウィング側にはパリを拠点に多国籍展開するペロタンが出展。スウェーデンを拠点に北欧を中心に活動するクララ・クリスタローヴァを個展形式で紹介している。今回が日本初個展となるクリスタローヴァ。自然に囲まれた生活の中で見出したモチーフを陶芸とペインティングで表現した作品が並ぶ。
また、近現代の陶磁器を扱うしぶや黒田陶苑の向かいには、KOSAKU KANECHIKAがブースを構え、「ロエベ クラフト プライズ 2018」で特別賞を受賞したことが記憶に新しい桑田卓郎と、「ヒールレスシューズ」で知られる舘鼻則孝の2人展を開催。世界から注目を集めるふたりのタッグにブースは盛り上がりを見せていた。
毎回中央通路の脇にブースを出展する青山|目黒は、写真や彫刻、ドローイングなどを組み合わせたインスタレーションを制作している磯谷博史を個展形式で紹介。磯谷は現在森美術館で開催中の「六本木クロッシング2019展:つないでみる」にも参加しており、美術館とアートフェアをつなぐ試みを見せる。
WAITINGROOMのブースでは、エキソニモの作品に注目したい。エキソニモは、千房けん輔と赤岩やえによって1996年に結成され、現在はニューヨークを拠点とするアートユニット。フェアでは、2018年の「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)でも展示された《live Streams》(2018)を販売。なおエキソニモは、WAITINGROOMで個展「LO」を開催中。クリエイションギャラリーG8で開催中の「光るグラフィック展2」でも作品を見ることができる。
ミヅマアートギャラリーでは、山口藍の陶磁作品をチェックしてほしい。有田で有田焼きの陶片を見たことをきっかけにつくられた大作《また会う日に》(2019)は、陶片をつないでひとつの作品に構成したもので、「陶片が持っている時間の経過を取り入れたい」という山口の考えが反映された新作だ。細胞組織などをモチーフにした細かな文様や色にも注目したい。
古美術から現代美術までが同じ場所に会する「Galleries」は、今後さらにジャンルを超えた会場構成になっていくだろう。こうした試みによって、普段出会うことがない作品へのアクセシビリティがさらに高まることが期待される。
なおロビーギャラリーでは、各ギャラリーが新進の若手作家を個展形式で紹介する「Projects」や、各国駐日大使が推薦する各国代表の若手アーティストを集めた「World Art Tokyo」、国内芸術系大学の学生による「Future Artists Tokyo」が開催。また今回は初の試みとして、都内3ヶ所(寺田倉庫 T-ART HALL、住友不動産六本木グランドタワー 駅前広場、羽田空港国内線 第2旅客ターミナル 2F出発ロビー)でのサテライト展示も展開。会期中は無料のシャトルバスも運行されるので、この機会に利用してみてはいかがだろうか。