NEWS / PROMOTION - 2019.3.7

アートを愛するすべての人に。8回目となる「3331 ART FAIR」がスタート

気鋭のアーティストを紹介し、アーティストとコレクターとギャラリーを直接つなげる仕組みをつくりあげてきた「3331 ART FAIR」。東京・外神田のアーツ千代田 3331を会場に5日間にわたって開催されるこのアートフェアが、3月6日に開幕。その見どころを紹介する。

会場風景

  東京・外神田にあるアートセンター「アーツ千代田 3331」(以下3331)が主催するアートフェア「3331 ART FAIR」。このフェアは2011年より毎年開催され、気鋭のアーティストとコレクター、ギャラリーをつなぐ仕組みをつくってきた。

 「展示している作品を買う」にとどまならない「3331 ART FAIR」の特徴や見どころとは? 3月6日にスタートしたフェア初日の様子を通してそれらを紹介していきたい。

アーツ千代田 3331の入口

 まず、このフェアのユニークなポイントとして挙げられるのは、旧校舎である3331の建物を最大限に生かした会場構成だ。地下1階から屋上、体育館を舞台に、「買う」「見る」「参加する」「知る」を多彩に楽しむことができる。

メインギャラリー

 1階のメインギャラリーでは、笠原美智子(石橋財団ブリヂストン美術館副館長)、黒澤浩美(金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター)服部浩之(キュレーター)、福住廉(美術評論家)といった識者や、Gallery OUT of PLACE TOKIOなどのギャラリーが推薦する、気鋭のアーティスト約70組の作品が揃う。

《アメリカのドーナツと沖縄のドーナツを合体させて穴のない完璧なドーナツをつくる》を出品中の、キュンチョメのホンマエリ

 まず紹介するのは、《アメリカのドーナツと沖縄のドーナツを合体させて穴のない完璧なドーナツをつくる》を出品中の、ホンマエリとナブチからなるアーティストユニット「キュンチョメ」。本作は、「アメリカの象徴としてのドーナツの穴に、沖縄名物のサーターアンダギーを入れることで、穴のない“完璧なドーナツ”をつくる」というキュンチョメのプランを聞いた沖縄の人々が、同地やアメリカに対する思いを語るというもの。3月9日、10日の13時頃(予定)より、実際にドーナツやサーターアンダギーを食べながら作品を鑑賞できる。

公開制作を行う大久保あり

 会期中は毎日会場で制作を行う大久保ありは、会場に「作業小屋」を出現させた。3月6〜9日は石板に文字を彫り、最終日の10日はそれを拓本にするというこの公開制作。スピードや正確さが重要視される「伝達」に、あえてエラーを引き起こす、大久保の作品シリーズ「あなたの美しい文字に心はありませんでした」の制作プロセスの一環をここでは見ることができる。

「Family Regained」シリーズの前でパフォーマンスが披露された。左から森栄喜、石倉来輝

 笠原美智子の推薦によって今回のフェアに参加した森栄喜は「Family Regained」シリーズを出品。友人とその家族、またはふたりの男性、ひとりでたたずむ男児を、彼らの住まいや庭などで、約3年間をかけて撮影したこの写真シリーズでは、血縁だけではない家族のあり方を見せる。初日には、森自身と、俳優の石倉来輝による新作パフォーマンス作品《合言葉/Sweet Shibboleth》が披露された。

澤田華の展示風景
金サジの展示風景

 会場にはそのほかにも、写真、映像、立体、インターネットなど様々なメディアを用いながら、写真固有の特性に基づいた作品制作を行う澤田華、「目の前に世界が存在しているということ」自体のイメージを絵画に変換しようとする松田啓佑、様々な民族の伝承を体験した後に感じるデジャヴをもとに写真を撮影する金サジらによる作品が集まる。

 作品メディアもさることながら、社会問題、ジェンダー、個人史、美術制度、作品メディアとの関係性など、作品の背景にあるテーマの多様さにも注目してほしい。

藤浩志の展示風景
手前が高山登、奥が堀浩哉による作品

 そして今回、特別企画展として「遊殺・以後|高山登 × 椿昇 × 日比野克彦 × 藤浩志 × 堀浩哉」が行われている。この企画は、1960年代もの派からポストもの派、80年代のニューウェーブまで、各時代の美術動向を牽引してきた4名が集結。当時の作品を中心に、貴重なラフスケッチ、本邦初公開の作品を紹介(一部非売品)するというものだ。

手前が日比野克彦、奥の壁面が椿昇による作品

 日本の現代美術の文脈、流れを3331独自の視点で再検証する本企画。若手作家による作品が多く集まる会場と対比的に見ることによって、双方への新たな発見を得ることができるような構成になっている。

体育館エリア

会場風景

 2階の体育館エリアでは、独自の視点と運営ポリシーで活動するコマーシャルギャラリーや美術団体、美術系大学がブースを出展。現状のアートマーケットの活性化とともに、次世代のアートマーケットの拡充も視野に入れた取り組みをチェックしたい。

左から中村政人、高山登、椿昇、日比野克彦、藤浩志

 なお、体育館エリアのイベントスペースでは、特別企画展「遊殺・以後|高山登 × 椿昇 × 日比野克彦 × 藤浩志 × 堀浩哉」の参加作家である高山、椿、日比野、藤と中村政人(3331 ART FAIR 総合ディレクター)によるトークイベントが初日に開催され、盛況を収めた。3月8日(金)14時には、キュレーターの笠原美智子、黒澤浩美、美術評論家の福住廉によるトーク、10日(日)14時には、堀浩哉と黒瀬陽平による「70年代以降の表現」と「3.11以降の表現」についての対談も行われる予定だ。

教室エリア

 Gllery KIDO Press、ナップギャラリー、佐賀町アーカイブなど、12のギャラリーが入居する3331。アートフェアの会期中には、各ギャラリーによる趣向を凝らした企画展も開催されている。

「フィジーク トス」の展示風景より、手前が小林椋の作品

 アキバタマビ21では、ucnv、小林椋、時里充、本山ゆかりによる4人展「フィジーク トス」が開催中。破損した画像や映像から生まれる「グリッチ」を意図的につくり出すucnvと、キネティックなオブジェにビデオカメラやディスプレイを組み合わせたインスタレーションを発表する小林。そして、認知や計量化といったデジタル性に関する作品を制作する時里と、絵を構成する要素を分解しながら、絵をつくる/鑑賞する際に起きる一つひとつの出来事を見つめる本山による注目のグループ展だ。

 なお、フェア中は各ギャラリーにスタンプが置かれ、12のスタンプを集めるとオリジナルグッズをもらえるという特典も。

屋上エリア

 通常は立ち入ることのできない屋上もフェアの会場となる。ここでは、石毛健太、小川真生樹、栗原良彰、中嶋崇、藤林悠、やんツー、BIENらによるオルタナティブな表現が集まる。

BIENの展示風景

 屋上入口の立体作品《Growing Hollow》は、ストリートカルチャーやアニメーション、フィギュアといった表現に影響を受けた独自のスタイルでドローイングや抽象的な絵画を構成する「BIEN」によるもの。

栗原良彰の作品《コンパニオン》が上映される屋上入口

 そして、その隣で上映されるのは、転がり落ちる巨大なとうもろこしを作家自身が受け止めるパフォーマンスを映像にした、栗原良彰の作品《コンパニオン》だ。広々とした屋上に足を踏み入れると、映像内で使用される装置、とうもろこしも展示されており、ユニークな光景をつくり出している。

3331の屋上。手前がやんツーの作品

 この屋上では、デジタルメディアを基盤に、行為の主体を人間ではなく装置や外的要因に委ねることで表現の主体性を問うやんツーによるドローイング作品にも注目したい。機械が描画したというドローイング作品は10メートルにもおよび、購入者の希望の長さに応じた「量り売り」も可能だという。

BLUM&POEの会場風景
安野谷昌穂の展示風景

 なお「3331 ART FAIR」は今年から、韓国の4つのギャラリー、そしてロサンゼルスを本拠地とするBLUM&POEが出展するなど、国際的なアートフェアに向けて歩みを進めた。BLUM&POEでは石川順惠、中村一美に加え、気鋭の若手アーティストである七搦綾乃(ななからげ・あやの)、安野谷昌穂(あのたに・まさほ)、大井戸猩猩(おおいど・しょうじょう)ら8名を紹介。今後国際的な活躍が期待されるアーティストの表現をいち早くチェックできる機会をお見逃しなく。

 そのほかにも、サテライト会場であるNOHGA HOTEL UENOでは、佐藤直樹と鈴木昭男が作品を展示している。3331から徒歩15分ほどのこのホテルも忘れず訪れたい。なお晴天の日に限り、tokyobikeの90分間無料レンタルも実施しているため、両会場を行き来する便利な交通手段になりそうだ。

会場風景
会場風景より、手前がユニス・リュックの作品

 「3331 ART FAIR」が他のフェアと異なる大きな特徴のひとつが「プライズセレクター」の制度だ。これは、アートコレクターや企業人、クリエイターといった各界のキーパーソン約100名が「プライズセレクター」としてフェアに参加し、出品作品を購入するというもの。作品が買い上げられたアーティストには、各セレクターの名前を冠した「コレクター・プライズ」が授与され、会期中に会場内で順次発表。誰が誰の作品を購入したのか、そのマッチングにも関心が集まる。

 また、The Chain Museumが開発したアーティスト支援アプリ「ArtSticker」と連携し、来場者が気軽にアーティストにドネーションできるシステムも導入する。

会場風景

 フェア会期中には各種トークイベントやパフォーマンス、ワークショップに加え、会場近隣のおすすめグルメが集うフードやブックマーケットなども開催。親しみやすくオープンな雰囲気のあるこのフェアで、アートコレクターへの第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。