日本のアートシーンに新たなエコシステムを。規模拡大の「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2019」が2会場で開幕
現代美術家として多方面で活動する椿昇がディレクターを務め、2018年に初回が開催されたアートフェア「ARTISTS’ FAIR KYOTO」。その第2回が、規模を拡大して開幕した。アーティスト自らが作品をプレゼンテーションするこのフェアの、注目ポイントとは?
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「アートフェアは世界中どこもマンネリ化している」。「ARTISTS’ FAIR KYOTO」のディレクターであり、自身もアーティストである椿昇はそう語る。「世界中どこのアートフェアも同じようなギャラリーと作品ばかり。アトラクションが変わらない遊園地みたいで、関係者も飽き飽きしているんです」。世界的にアートフェアの数は増加傾向にあり、アジアでも次々に新しいフェアが生まれている。そんななか、独自のポジションを獲得しようとしているARTISTS’ FAIR KYOTOが2回目の開催を迎えた。
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作品を売るのはギャラリーではなく、アーティストたち。それぞれが自作の前に立ち、来場者へプレゼンする。その対価として、売上の100%をアーティストが得るという、独特のシステムだ。こうした新しさもあってか、前回は初開催にもかかわらず2日間で約3000人の来場者を記録した。
「このARTISTS’ FAIR KYOTOは、若いアーティストがサバイバルしていく場なんです。京都には大きなアートマーケットもギャラリーもないから、例えば僕やヤノベ(ケンジ)、名和(晃平)君なんかはそれぞれの方法でサバイバルしてきた。そういった生き残り方を、若手作家に学んでもらいたい」。
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今回は、昨年のメイン会場だった京都府京都文化博物館 別館に加え、京都新聞ビル 印刷工場跡も会場として利用。新たに公募部門を新設し、推薦と公募をあわせた総出品点数は2会場で350点以上におよぶ。とくに注目したいのは、京都新聞ビル会場だ。ここにあるのは映像やインスタレーションがほとんど。絵画や写真などと比べ、比較的売りにくいとされるジャンルの作品が並ぶ。
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例えば、今年の岡本太郎現代芸術賞(通称「TARO賞」)で大賞の岡本太郎賞を受賞した檜皮一彦(ひわ・かずひこ)は、真っ白な車椅子と照明を組み合わせた《hiwadrome type THE END spec4》(2019)など複数作品を展示・販売。
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また「カオス*ラウンジ新芸術祭 2016 地獄の門」など多数の展覧会に参加している山内祥太は、ブレーメンの音楽隊をテーマにしたヴィデオ・インスタレーション《レクイエム》(2018)を展示し、VRヘッドギアごと作品を販売するということを試みている。
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こういったバリエーションに富んだ会場には、椿の強い思いが反映されている。「展覧会としての質も担保したい。売りやすいものだけを並べたくなかったんです。買えるものなら買ってみろと、コレクターに対しても突き付けたい。買いやすいものだけを買うんじゃなくて、コレクターも僕たちと一緒に戦ってほしい」。
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そのいっぽう、京都文化博物館会場は絵画を中心とした作品群をじっくりと見れるような構成となっている。重要文化財の空間をフェア会場に仕立て上げたのは、前回同様ドットアーキテクツ。吹き抜けの空間に2階構造の展示スペースが出現した。
若手作家だけでなく、椿の新作ペインティングのほか、本フェアのアドバイザリーボードである塩田千春、薄久保香、大庭大介らの作品が並ぶのもこの会場の特徴だ。
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前回にも増して多種多様な作品が一堂に会するARTISTS’ FAIR KYOTO。椿はその将来についてこう語る。「京都にコレクターが買った作品を一箇所で保管できるような場所をつくりたいんです。買った作品を展示もできるような場所をね。そういう『保管場所があれば買う』という人は絶対いると思う。海外のギャラリーなんかに頼らない、日本のマーケットだけでお金が回るエコシステムを構築したいんです。そのためにARTISTS’ FAIR KYOTOはある」。
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壮大な目標を見据えながら運営されるARTISTS’ FAIR KYOTO。今後大きく進化する可能性を秘めた、このアートフェアは今回も注目を集めそうだ。
なお、本展ではサテライトイベントとして「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2019:BLOWBALL」も同時開催中。荒木悠、木村翔馬といった若手作家たちが、京都府内の飲食店、ホテルといった身近な場で作品を展示・販売している。こちらもあわせてチェックしてほしい。
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