見えないものを見つめる15日間。
「第10回恵比寿映像祭」が
東京都写真美術館ほか数ヶ所で開幕

展示、上映、ライブパフォーマンス、トークセッションなど複合的なプログラムを行う映像と美術の国際フェスティバル「恵比寿映像祭」が2月9日よりスタートする。会場は東京都写真美術館、日仏会館、ザ・ガーデンルーム、恵比寿ガーデンプレイス センター広場など数ヶ所。

「第10回恵比寿映像祭」記者会見での出品者(一部)の様子

 世界を光で照らし出し、見えないものを浮かび上がらせる映像の不可視性=「インヴィジブル(見えないもの)」をキーワードに、様々な映像のあり方を見つめ、現代を考えるための約100作品が集結する今年の「恵比寿映像祭」。本展のディレクターを務める田坂博子(東京都写真美術館学芸員)は「何が現実を表しているか見えにくい時代、私たちがいかに“見えていない”かを理解するとともに、歴史、社会の文脈を集めることで、それらを見ていきたい」と話す。

会場風景より。ラファエル・ローゼンダールのレンチキュラー作品が並ぶ

 展示エリアの冒頭で展示されるのは、主にインターネット空間を作品発表の場としてきたラファエル・ローゼンダールの作品だ。見る角度によって色彩やイメージが移ろいを見せる「レンチキュラー」を使った「レンチキュラー・ペインティング」シリーズは、インタラクティブな作品を手がけてきたローゼンダールにとって「アルゴリズムを使わずに、私たちの身体がインタラクティブを発動させるユニークな素材」だという。

ポール・シャリッツ Shutter Interface 1975

 実験映画の伝説的巨匠、ポール・シャリッツによる16ミリフィルム・インスタレーションは、本展の見どころのひとつだ。シャリッツは1960年代より、光の明滅(フリッカー)を取り入れた作品を積極的に発表。本展で紹介される《シャッター・インターフェース》は、それまでの試みをより発展させ、独自の視聴覚体験をもたらす作品となっている。そのほかにも、70年代からフィルムとビデオによる実験的な映像制作を始めた出光真子など、過去から現代まで、実験的な映像作品も多く並ぶ。

マルティーヌ・シムズ レッスンズ I-CLXXX 2014−

 視覚文化のなかの「黒人らしさ」というテーマに取り組むマルティーヌ・シムズは、現代の日常において人々の間に流通し、内面化され、日常の身振りとなった「黒人らしい」イメージを蒐集した映像作品を発表。そのほかにも、パリ在住のフランス人アーティストと日本人現代史研究者のナターシャ・ニジック&䑓丸謙が、視覚障害を有するがゆえに巫女となった「イタコ」の継承者を取材した新作映像作品、ISISとの遭遇のトラウマを、耳の聞こえない少年が身振り手振りで打ち明けるエルカン・オズケンの《ワンダーランド》など、多種多様なテーマで現代における不可視なるものを照射していく。

青柳菜摘 孵化日記 2014-2015 2016

 またこうした映像に加え、蝶の幼虫を探し、飼育するという「記録」を拡張させ、新たなナラティヴを生み出す青柳菜摘の《孵化日記 2014-2015》、2011年の東日本大震災と1945年の日本への原爆投下という2つの放射能の恐怖を背景としたスッティラット・スパパリンヤの《東京の10ヶ所》など、空間を利用したインスタレーション作品も見どころのひとつだ。

SHIMURAbros 映画なしの映画−創造的地理 2010

 複数の会場で行われる「恵比寿映像祭」。日仏会館では「映像」「映画」「見ること」にまつわる作品を手がけてきたSHIMURAbrosが、「未だ見えぬ映画に向かって」と題した展示を開催。新作、旧作を含めて会場を構成している。

インビジブル・デザインズ・ラボ 予言 2018

 いっぽう、オフサイト展示となる恵比寿ガーデンプレイスセンター広場では「見えないものこそ大切」を信条に音、アイデアを可視化してきたインビジブル・デザインズ・ラボが新作インスタレーションを発表。この作品では、中央のピアノを鳴らす、あるいは見えないものの力によって、周囲の機構がユニークな動きを見せる。

 こうした作品のほか、アジアプレミア3作品、ジャパンプレミア18作品を含む上映プログラム、パフォーマンス、シンポジウムなど、多彩なプログラムが展開される本展。15日と会期が短いため、気になる方に早めにチェックしてほしい。

編集部

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