渋谷の入口に現れる「新たな生命」
展示はPARCO MUSEUM TOKYOだけにとどまらず、渋谷PARCO内の各所で行われる。公園通りに面する1階正面エントランスでは、ロンドンを拠点に活動する稲垣悠太朗による作品を展開する。

稲垣は、グラフィティの制作や都市探索の経験を背景に、都市にある既製品や工業素材を用いながら、都市と生物とが入り混じるような身体を制作してきた。稲垣が作品を設置したのは、商業施設の内部と路上とのあいだにある風除室だ。そこには、人間の身体と動物のような頭部が組み合わされた複数の身体、「Citizen」シリーズが展示されている。これらは粘着テープやプラスチックフィルム、衣服、アニマルマスクなどを用いてつくられたもので、稲垣がこれまで都市へ適応するための「肌」として扱ってきた黒い既製品が、新たな身体のかたちへと組み替えられている。
風除室は、本来、人が滞在するのではなく通過するための場所だ。そこに異質な身体を置くことで、普段は意識されない「街/建物」「外/内」の境界がわずかにずれる。人の流れを眺め、同時に通行人から眺められるその身体は、人間なのか、動物なのか、それとも人工物なのかを容易には判別させない。日常的に通過する都市空間そのものを、わずかに見慣れないものへと変化させている。
SUPER DOMMUNEをひとつのアートスペースへ
9階のSUPER DOMMUNEでは、「P.O.N.D.」とDOMMUNEによる新たなコラボレーションプロジェクト「P.O.N.D.OMMUNE」が始動。その第1弾として、玉山拓郎の展示が行われる。玉山は、家具や日用品を思わせるオブジェクトと光、音響などを組み合わせたインスタレーションを制作してきた。

メインフロアに展開される《After Overture》(2025〜26)は、設置場所の開口部から形態を導き、それらを円状につなげることで生み出した《Overture》(2024)を発展させた作品だ。《Overture》の制作で得られた生成原理を作品内部へと移すことで、特定の場所との関係を保ちながら、異なる空間にも展開できる構造へと変化させている。また、作品を組み立てる際に生じる金属音を録音し、それを一定のルールのもとで引き延ばし、重ねることで、制作のプロセス自体をサウンドとして空間に立ち上げている。

ミーティングルームに設置された《Epiphany》(2026)は、光源と物体の位置関係から生じる逆光を起点とする。物体の背後に光源を置くことで、その色や質感、細部は光のなかへ後退し、輪郭だけが前面へと現れる。鉄とLEDライトという物質的な要素によって構成されながら、物体と像との境界を曖昧にし、何かが不意に出現するかのような知覚をつくり出している。
SUPER DOMMUNEは通常、ライブストリーミングや音楽、トークが行われる場だ。そこへ玉山の光、物体、音による作品が置かれることで、場所そのものの機能もまた一時的に組み替えられている。



















