白老のなかで生まれるアートをめぐって。町民参加を主軸にした「ルーツ&アーツしらおい」

北海道の南西部にある白老町で第5回を迎える「ルーツ&アーツしらおい 2025」が開催中だ。『美術手帖』では第2回から毎年レポートを掲載し、その変遷を追ってきた。今回は、このまちで暮らす人々にスポットが当てられ、町内9ヶ所で10の企画が展開された。

文=來嶋路子

DRAWING AND MANUAL《TSUNAGU – 楽器の秘密基地》 撮影=高田賢人(BY PUSH)

試行錯誤を重ねた5年の道のり               

 2020年、白老町にアイヌ文化の復興・創造などを担う「ウポポイ(民族共生象徴空間)」がオープンし、国内外からより多くの人々が訪れるようになった。そのにぎわいをまち全体へ広げるアクションとして、翌年から「ルーツ&アーツしらおい」がスタートした。

 第1回は、アーティスト・イン・レジデンスやイラストレーターによるプロジェクトに加え、ラジオ配信も行われ、コロナ禍への配慮を反映した内容だった。第2回以降は規模が拡大し、国内外からアーティストを招聘。白老という土地の固有性に多角的な視点が向けられ、アイヌ文化や人々の暮らし、地形、歴史に触れることで、埋もれていた記憶が作品として蘇った。

 転換期となったのは昨年。主催する白老文化観光推進実行委員会の熊谷威二会長は「白老町民が、白老の営みと文化に誇りをもち、そこにたずさわる人々の魅力を発信したい」と語り、地元在住作家の比率を高める方針へ舵を切った。これまでも白老で絵画制作を続ける田湯加那子らの参加はあったが、在住者の参加割合をさらに増やし、古布絵作家でありアイヌ文化の伝承者である宇梶静江の展示や白老の手仕事展などが実施された。