白老のなかで生まれるアートをめぐって。町民参加を主軸にした「ルーツ&アーツしらおい」【4/4ページ】

白老でどのようなアートが生まれているのか

 このほか第57回の白老美術協会展が、ルーツ&アーツしらおいにあわせて手仕事サークルとの共催で開かれ、約130作品が展示された。タイトルは「相互観照の新しい小宇宙展」。白老美術協会の浦木嘉男副会長によれば「作品を生み出すことが生きる活力になっている。その姿を若い人たちにも感じてほしい」という思いをこめて「相互観照」と名付けたという。

「相互観照の新しい小宇宙展」展示風景より 撮影=筆者
浦木嘉男《サルルンカムイリムセ》 アイヌの舞踏を表した木彫。彫り進めると中は空洞で、瞳孔には偶然できた穴が重なった 撮影=筆者

 コンセプチュアルな作品から手仕事まで幅広い表現が並び、まちの誰もがフラットに参加できる状況だからこそ、この地でいまどのようなアートが生まれているのかをダイレクトに感じられる機会となった。そして、なぜ作者がこうした表現を行ったのか、そのルーツにじっと耳を傾け理解を深めることも大切であると感じられた。

 熊谷会長によれば、招聘アーティストが中心だった第2、3回は、町民の関心が思うように高まらない現実もあったという。町民の作品展示を増やすことで、このプロジェクトを身近に感じる声が多く寄せられるようになった。地方創生や関係人口の拡大を目指すアートプロジェクトが各地で行われるなか、地域の人々との関係構築はつねに課題といえる。ルーツ&アーツしらおいが選んだ方向性は、これからどんな結果をもたらすのか。変容し続けるそのプロセスを、これからも追いかけていきたい。