NEW AUCTIONが3月15日、東京・目白の古道具店「古道具坂田」を通じて長年にわたり蒐集された吉澤宏隆のコレクションセールを開催する。
古道具坂田は、1973年に店主・坂田和實(1945〜2022)によって開かれた。骨董や古美術といった既存の枠組みにとらわれず、「古道具」という言葉のもと、日常のなかで使われ、時を重ねてきた物に宿る美を提示し続けてきた存在だ。
その審美眼は、価格や時代、作者といった一般的な評価軸ではなく、坂田自身の眼に「美しい」と映るかどうかに基準を置くものだった。欠けや疵、歪みなど時間の痕跡を含んだ姿、あるいは本来の用途を失いかけた状態にさえ美を見出す姿勢は、多くの共感を呼び、国内外の愛好家に影響を与えてきた。

本セールに出品される品々は、すべて2024年に中国・杭州のBY ART MATTERS(天目里美術館)で開催された展覧会「古道具坂田 僕たちの選択」において紹介されたものだ。坂田の美意識を体現する選択の軌跡を、あらためて市場の場で提示する機会となる。
コレクターの吉澤宏隆が古道具坂田を初めて訪れたのは約30年前のことだという。「そこは私にとって、お互いの力量を探り合う真剣勝負の場だった」と振り返る。坂田が扱う品々のなかでも、吉澤がとくに共感したのは「ピュアなもの」「静かで内に秘めたもの」「枯れはてたもの」だった。「この品を理解できるのは自分が一番だ」という確信にも似た思いのもと、少しずつ蒐集を重ねていったという。

今回の出品について吉澤は、「年齢を重ね、次の方へ引き継ぐことも自分の使命だと考えた」と語る。市場には古いものが溢れ、飽和感を覚える人も少なくないかもしれない。しかし本オークションを通じて、「坂田さんの眼」、そしてその背後にある生き方を感じ取ってほしいという思いをにじませる。
時代や地域、用途を越え、坂田の審美眼によって選び取られた物たち。そしてそれに呼応し、自らの眼で応答してきたコレクターの軌跡。本セールは、ひとりの古道具商の思想と、それを受け継ぐ蒐集者の物語を次代へと手渡す機会となりそうだ。























